研究概要 |
・ブラウンと塩路は,日本の景気循環における技術的ショックと労働時間に関する研究を本格的にスタートさせた。その最初の成果は構造的VARモデルを用いて技術的ショックをデータから識別し,それが生産量や労働時間に与える影響を推定する論文である。これはいくつかの大学の研究会で報告した上ですでに『経済研究』に公刊した。現在は,多くの研究で想定されているような単一の中立的な技術的ショックだけでなく,投資財生産部門にまず影響を与えるようなショックをも導入したモデルの可能性を追求する研究を行っている。この研究は,理論モデルのシミュレーション,構造的VARモデルによる実証研究の両面から行っている。 ・宮川は,林とPrescottが発見した,1990年代のマクロレベルでのTFPの成長率の低下が産業レベルで観察されるのかを研究するため,上記産業別の要素投入のデータベースの1998年以降のアップデートを行った。2000年代までのアップデートは,来年度の初めになるが,1998年までのデータを使った生産性の分析を,数本の論文にまとめた(下記項目11を参照)。 ・林は,新古典派モデルによる,戦前の日本経済停滞の分析をほぼ完成させた。来年度の早い時期に,学術雑誌に投稿する。 ・前年度までと同様,ホリオカ・有賀班と共同でマクロ経済研究会を開催した。今年度は12月に行い,「日本経済の大停滞の原因」というテーマを設けて,主に本領域の研究分担者が研究成果を発表した。これらの研究は,日本経済学会の機関誌であるJapanese Economic Reviewの特別号として出版予定であるが,林・有賀・ホリオカが編集者を務める。 ・6月に,「低インフレ下の金融政策」をテーマとして,国際コンファレンスを共催した。林が,そこで発表された金融政策についての論文に討論者を務めた。 ・前年度までと同様,海外の有力研究者を招聘し,マクロ経済学,とくにTFPの分析について研究交流をはかった。今年度は,ハーバード大学のJorgenson教授,プリンストン大学のSims教授を招いた。 ・以上の実績のうち,海外有力研究者による講義,研究会のプログラムと論文の内容は,総括班のホームページhttp://www2.e.u-tokyo.ac.jp/^-seido/から閲覧できる。
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