研究課題/領域番号 |
12124204
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤原 正寛 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40114988)
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研究分担者 |
井堀 利宏 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (40145652)
土居 丈朗 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (60302783)
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キーワード | 中央政府 / 地方政府 / ソフトな予算制約 / 政府間財政 / 先送り / 消耗戦ゲーム / 解消可能な繰返しゲーム / 信頼形成 |
研究概要 |
次のような研究を行った。 1.中央から地方政府への補助金に伴うソフトな予算制約(SBC)を、両政府間で課税ベースが重複する2期間モデルを使って分析した。中央政府の国民厚生最大化行動を予想する地方政府は、予め行う過大な支出によって事後的な追加的補助金を引出そうとする。 ハードな予算制約とSBCのどちらが望ましいかは自明でないが、SBCが地方の過大支出と経済厚生負担をもたらす可能性が高いという理論的結果。SBCが過大支出をもたらし経済低迷に結びついた可能性や、地方政府が地方債を過剰発行した実態。政治経済学的背景として、90年代の民間経済活動の低迷が国の補助金獲得の金銭的便益を増加させ、それを巡る政治的圧力がSBCを増大させたなどの実証的結果を得た。 2.90年代に多発した問題解決の先送りを、関係者間のコスト負担交渉に要する時間として分析した。安定的な長期関係があれば関係者間の慣行が負担割合を決めるが、長期関係が崩壊すると新たな制度配置が確立するまで負担原則のフォーカル・ポイントが確立されず、先送りが起こることを消耗戦ゲームの進化動学を使って示した。この結果は、関係者数が増えまた交渉の透明性が低いほど高まるので、全員一致を前提し密室交渉の多い日本に整合的である。 3.見知らぬ人同士でも信頼関係を作り出すための仕組みを、中途解消可能な繰返しPDゲームをランダムにマッチしてプレイする進化動学で分析した。信頼破りの社会的制裁として、新たな相手を容易に見つけられない(失業)、新たな相手と何期か信頼形成投資をする必要があるという周知の仕組みに加えて、異なる信頼形成期間の慣行が社会で共存することが安定になり、ミスマッチによる損失が社会的制裁になる可能性を示した。
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