研究概要 |
本研究の目標は,乱流要素渦の基本特性とその動力学を,数値シミュレーション解析および理論解析の双方から解明することにある。まず,基本特性の解明(木田・三浦・後藤)では,「低圧力渦」の軸と芯を解析手段として,乱流の時空間構造を視覚的に表現し,渦運動が流れの中でどのような活動をしているかを理解する。本年度は,高精度の定常一様乱流場のデータベース(格子点数512^3,レイノルズ数86,119,170),渦軸および渦芯を用いた渦構造の可視化ムービー,および,ミニマル2次元クエット乱流の時間的周期解のデータベースの作成と低圧力渦の物理特性(長さ,太さ,循環,等)のレイノルズ数依存性,管状渦まわりの二重スパイラル渦層のエネルギー散逸と混合現象におけるはたらき,および,電磁流体の熱対流運動における渦と磁場の回帰的相互作用とMHDダイナモの解明に取り組み,それぞれの課題について興味ある結果を得た。つぎに,基本動力学の解明(宮嵜・藤)では,典型的な条件のもとで,流れや固体境界と渦の相互作用を調べる。大規模秩序渦と一様乱流との相互作用のシミュレーション解析により,秩序渦の誘起する剪断流による乱流要素渦の引き伸ばしや,各種の渦波による秩序渦の振動・崩壊過程を再現した。一方,乱流要素渦と固体壁との相互作用の研究では,壁乱流の中で最も基本的で重要な平行平板間乱流を取り上げ,乱流の生成機構を解明する。平行平板間乱流における乱流生成機構と秩序構造との関係を,定常進行波解を基にした少数自由度系のダイナミクスとして理解する。進行波解は,波打った低速ストリークとその両側に交互に千鳥って配置された正負の縦渦から構成されている。乱流の生成機構は,この定常進行波解の安定多様体に沿って解に漸近する過程と,不安定多様体に沿っての爆発的な離脱過程からなっていると考えられる。
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