研究概要 |
核マントル境界領域での物性を解明するために,本年度はダイヤモンドアンビルシステムに高温を測定用の分光装置を設置し,レーザーによる高温発生と測温を可能にした.これらのシステムと筑波のPFの放射光を用いて,前年度に引き続いて,FeOとマグネシオブスタイト(Mg0.1Fe0.9)Oの相転移を外熱法及びレーザー加熱法により明らかにした.その結果100GPaを超える圧力でNiAs構造の高圧相FeOが見い出されたのに対して,(Mg0.1Fe0.9)Oでは稜面体構造相が安定に存在することが明らかになった.この結果は,Fei et al.(1998)の結果と一致しない.今後さらに詳しい実験を行なう計画である.さらに,金属鉄とMgSiO3ペロブスカイトとの反応実験を行ない,約40GPa,2000Cを超えるの条件で両者が反応してFeOとFeSi合金が生成することを示唆する結果を得た.今後さらに詳しい研究を行なう計画である. さらに,金属鉄と軽元素の系の合金の状態方程式の決定に着手し,FeHに関しては常温で約30GPaまで,FeSi合金については常温で120GPaまでの圧力条件で圧縮曲線を決定した.また,金属鉄と水の反応を50GPaの条件まで明らかにし,スラブの条件でも両者が反応してFeO+FeHが生じることが明らかになった.これらの結果は核マントル境界での反応,核内の軽元素を論じるための基礎的データを与える.
|