研究概要 |
ポリプロピレン(PP)の高速溶融紡糸における分子配向機構を明らかにするため,紡糸線に沿った複屈折変化を,直径および光学遅延プロフィールの同時オンライン計測により解析した.光学遅延は,He-Neレーザ光源,偏光板および四分の一波長板と高速回転する偏光板を組み合わせた光学系により測定した.複屈折は紡糸線上流域でごく僅かに増加するのに対し,紡糸線が固化する直前では,結晶化の開始に関係すると考えられる急激な増加を示した.紡糸速度が高いほど,この固化点近傍での複屈折の増加は著しい.また,細化完了後も複屈折が徐々に増加するという特徴的な挙動が見出された.紡糸直後のPP繊維も時間の経過に伴い複屈折が僅かに増加することから,細化完了後の複屈折増加は紡糸線に沿った空気抵抗力の増加による応力増加によるものではなく,結晶化などの高次構造変化に起因するものと考えられる.溶融状態での応力光学則の適用性について検討するため,得られた直径プロフィールを用い,紡糸過程の数値解析により張力および温度の変化を求めた.その結果,紡糸線上流域の溶融状態での複屈折の小さな増加は,PPの応力光学係数が低いことに起因することが明らかになった.一方,紡糸速度1km/min以上では,紡糸線応力が約1MPaを越えると著しい複屈折増加が生じることが見出された.これらの結果は,この応力を境に紡糸線上で配向結晶化が起こり始めることを示唆するとともに,PPの高速紡糸繊維の複屈折増加には結晶化が深く関与していることを示している. 当方性応力場における結晶成長速度の基礎的データを確立するために、高分子の結晶成長速度の温度依存性において現れる成長速度の極大値の分子量依存性をポリエチレンサクシネートを用い詳しく検討した。その結果、極大結晶成長速度と分子量の間には、パワー則が成立した。低分子量側では、伸びきり結晶が成長し、その分子量依存性の傾きは正で約1の値を示した。高分子量側では、折りたたみ結晶が成長し、その分子量依存性の傾きは負で約0.5の値を示した。この-0.5の傾きは多くの結晶性高分子で成立する。
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