研究課題/領域番号 |
12127203
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梶 慶輔 京都大学, 化学研究所, 教授 (00026072)
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研究分担者 |
今井 正幸 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (60251485)
深尾 浩次 京都大学, 総合人間学部, 助手 (50189908)
金谷 利治 京都大学, 化学研究所, 助教授 (20152788)
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キーワード | 結晶化 / 誘導期 / スピノーダル分解 / 静置場 / 流動場 / 排除体積効果 / MDシミュレーション / 相分離 |
研究概要 |
我々はすでに高分子ガラス状態からの結晶化過程の誘導期においてスピノーダル型の相分離が起こることを小角X線散乱測定などの実験より明らかにした。この前駆的な構造は、高分子鎖の剛直セグメントが平行配向したドメイン(ネマティック的領域)と非配向ドメインがミクロ相分離した結果であることを示した。 梶、西田らはこのようなスピノーダル型の相分離はある温度(スピノーダル温度)以下で起こるが、それ以上の温度では古典的な核生成と成長過程で結晶化が進行することを高速温度ジャンプ法を用いた顕微鏡観察より明らかにし、さらに、ガラス状態からの結晶化では、スピノーダル型の相分離の特性波長が温度依存しないことを示した。 また、梶、金谷らは、せん断流動場下におけるアイソタクチックポリプロピレンの結晶下過程を光散乱と顕微鏡観察により調べた。その結果、繊維構造に特有なシシカバブ構造(シシである伸長高分子鎖とその周りにオーバーグロースした積層ラメラよりなる構造)の前駆体と思われる強く配向した構造を発見した。 深尾らはポリエチレンテレフタレートの配向ガラス状態からの結晶化に伴う構造形成を放射光による実時間X線回折測定を行うことにより調べた。その結果、スメクチック構造に起因する001反射強度が等温過程において、極大値を示すこと、さらに傾斜したラメラ構造に起因する小角4点像の強度の単調な増大をすること示した。このことはネマチックからスメクチックへのキネティクスとスメクチックから結晶相(三斜晶)へのキネティクスが共存することを示唆している。 今井らは高分子結晶化のモデルとして、棒状高分子(タバコモザイクウイルス)の分散系を選び、これに高分子電解質(コンドロイチン硫酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム)を添加することにより、棒状分子の秩序化(ネマティック転移)が従来知られている濃度よりも23桁も低い濃度で誘起されることを見いだした。また、この転移の機構が高分子電解質分子の剛直性に基づく枯渇相互作用であることを明らかにした。
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