研究課題/領域番号 |
12127204
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研究種目 |
特定領域研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮地 英紀 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90025388)
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研究分担者 |
丹沢 和寿 名古屋工業大学, 工学部, 講師 (60236776)
宮本 嘉久 京都大学, 総合人間学部, 教授 (00174219)
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キーワード | 高分子結晶 / ポリスチレン / 薄膜 / モルホロジー / 拡散 / 結晶成長 |
研究概要 |
高分子に関する特徴的な長さに比べて厚さが薄い膜を薄膜と呼ぶ。もっとも短い特性長はモノマーの大きさaで1nm以下である。高分子を特徴づける長さとして、溶融状態での重合度Nの分子鎖の広がりR〜aN^<1/2>があり通常は数十nm程度であろう。高分子溶融体では分子量が大きくなると絡み合い間距離(管模型での管の直径)も重要になり、これは数nmである。高分子折畳み結晶は厚さ十nm程度である。一般に結晶化は1)一次核形成2)物質の結晶成長界面への補給(物質拡散)3)物質の結晶表面への取り込み(界面キネティクス)4)結晶化潜熱の除去(熱拡散)の順に起こり薄膜の効果はこれらすべての過程に現われると考えられる。最近、高分子薄膜(厚さがR以下)では、結晶成長速度は遅くなる結果が得られている。薄膜の結晶化の研究は、「厚さ」というパラメータを新たに導入し、高分子結晶化機構の理解を深めることと薄膜固有の新しい現象の発見を目指している。分子鎖の広がりRより厚さが薄い、いわゆる「超薄膜」は高分子溶液のスピンコーティイングによって容易に作製できるようになってきた。アイソタクチックポリスチレンの超薄膜について、結晶ラメラ厚、成長速度、結晶の形の厚さ依存性を厚さ4nmまで測定された。その結果、イ)ラメラ厚はバルクと変わらない。ロ)成長速度は厚さに逆比例しておそくなり、10nmの厚さではバルクの半分以下の速度となるが、その結晶化温度依存性はバルクと同じである。ハ)結晶の形は高温ではバルクと同じであるが、低温では分岐の著しい拡散律速型となる。これらの結果は、膜厚が減少するにしたがって結晶化に寄与する分子鎖の拡散が遅くなることで説明された。
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