本研究課題のキーワードは、「直接観察」、「配向制御」、「エピタクシー」で、結晶化と密接に関係している。これらを念頭に、これまで透過型電子顕微鏡(TEM)で高分子結晶を観察してきたが、SPM(走査プローブ顕微鏡)を用いてどのようなことがどの程度分かるようになるか試用研究を行った。その結果は、第一回公開シンポジウム(平成13年1月11日、東京工業大学百年記念館で開催)での配布資料に記載してあるが、その要約を下に述べる。 1.イソタクチックポリプロピレン(iPP)の上にポリエチレン(PE)がiPP基板面の構造の影響を受け配向結晶化(エピタクシャル結晶化)すること、さらにはその構造、機構をTEM観察を通して解明してきた。TEM観察同様の試料を作製し、AFM(APMの一使用方法で、原子間力顕微鏡と呼ばれる)を用いて観察すると、全く同様の構造を観察することがでた。しかも重要なことは、試料の厚さを測れることで、厚さ方向の情報も手に入れることができることで、この構造形成の機構を明らかにできるものと期待している。 2.分子の成型には核剤が重要な役割を演じている。本研究の一つの課題として、核剤を視野にいれており、iPPの核剤であるアイソタクチックポリヴィニルシクロヘキサン(iPVCH)とiPPの結晶化の混合物を観察し、iPVCH結晶が中心に位置し核剤として働いていることを、しかもかなり厚い結晶となっていることを観察した。 3.本研究では、生分解性高分子であるポリ乳酸の結晶化挙動の解明を一つの課題としている。ポリ乳酸の薄膜からの結晶化を行い、形成された構造をAFMで観察できることが分かった。 以上、AFMの研究成果であり、期待どおりの性能のあることが分かり、今後の研究成果に期待している。また、TEM観察の研究では高分解能観察を通してpoributenn-1の転移を解明した。その成果は下のリストに載せてある。
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