高分子の結晶化における界面効果

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12127207
• 研究機関: 立命館大学
• 研究代表者: 河口 昭義 立命館大学, 理工学部, 教授 (80027060)
• 研究分担者: 辻 正樹 京都大学, 化学研究所, 助教授 (60172003)
• キーワード: 原子間力顕微鏡 / ポリエチレンオキシド / 拡散律速凝集体 / ポリ-L-乳酸 / ポリエチレンナフタレート / 低温結晶化 / 電子顕微鏡 / 高速紡糸

研究概要

本年度は、本特定領域プロジェクトの最終年度で、本プロジェクト主催で「高分子の結晶化」というテーマで国際会議が開かれた(June 9-12,2002,Shizuoka)。本会議には、われわれの研究班から2件の口頭発表と4件のポスター発表をした。その他国際会議(高分子物理の国際シンポジウウム(July 2-6,2002,Guigdao, China))に1件、および国内の学会、討論会等に9件の研究発表を行った。
多くの研究課題で研究を行ってきたし、現在も継続中のものもある中、本年度の重要な成果として次の研究が上げられる。
1)ポリエチレンオキシドを溶液からアルカリハライド結晶の上に結晶化させたときに、拡散律速凝集体(DLA)が形成されることを見出し、その構造を明らかにしてきた。高分子の結晶化には、「拡散」が重要な役割を演じており、本プロジェクトでの一課題として取り上げられているが、この拡散の影響がDLAの形で具現化されたのは、高分子の世界では最初である。
2)ポリ-L-乳酸の非晶を熱処理によって結晶化させたとき、低温での熱処理ではβ型、高温ではα型の結晶が形成されること、また、β結晶は高温でα結晶に転移することを見出した。ポリ-L-乳酸の結晶転移で問題になっていたことを明らかにした。これまで高分子非晶の結晶化の問題は余り扱われてこなかったが、この契機で"非晶高分子の結晶化"の重要性を認識した。
3)高速紡糸の研究は、工業的に重要な課題であるが、その過程で発現する構造については殆ど分かっていなかった。本プロジェクトの他の研究班との連携研究の一環として、われわれの班は生成したPEN(ポリエチレンナフタレート)の糸を電子顕微鏡、AFMで観察することによって構造を解明することを担った。この系では、異なる結晶構造が存在し、紡糸速度の違いによって、これら構造の発現の仕方が違うことを明らかにした。
これらの研究は論文に纏めて順次報告する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Masahiro Fujita, Kyo Jin Ihn, Masaki Tsuji, Shizo Kohjiya: "Perfectly alternating ethylene-carbon monoxide copolymer crystallized On alkali halides.2.Energy calcculation"Polymer. 43. 7307-7313 (2002)
• [文献書誌] Yaiyo Yoshioka, Masaki Tsuji, Yutaka Nawahara, _Shizo Kohjiya 他: "Permanganic Etching of Poly(ethylene terephthalate) Fibers"SEN'I GAKKAISHI. 58. 268-272 (2002)
• [文献書誌] 吉岡 太陽, 辻 正樹, 河原 豊, こうじ谷 信三, 鞠谷 雄士, 伊藤 啓: "ポリエチレンナフタレート繊維のフィブリル構造の発現に関する研究"日本化学繊維研究所講演集. 59. 1-9 (2002)
• [文献書誌] Hidekatsu Kuroda, Hiroshi Goto, Kazuo Akagi, Akiyoshi Kawaguchi: "Structure and Electroconductivity of a Sheared Liquid Crystalline Polyacetylene Deivatives : Poly(5-p-(trans-4-petacyclohexyl) phenoxy-1-pentyne)"Macromolecules. 35. 1307-1313 (2002)
• [文献書誌] Ryota Kurimoto, Akiyoshi Kawaguchi: "Morphological Study on Diffusion-Limited Aggregates of Poly(ethylene oxide) on Alkali Halides"J. Polymer Sci.: Part B : Polym.Phys.. 40. 2421-2430 (2002)
• [文献書誌] Ryota Kurimoto, Kenji Okumura, Akiyoshi Kawaguchi: "Textures of poly(ethylene oxide) on alkali halides : diffusion-limited Aggregates"Preprints of International Symposium on Polymer Crystallization. 12-13 (2002)
• [文献書誌] Masaki Tsuji, Masahiro Fujita, Shizo Kohjiya, Akiyoshi Kawaguchi: "Lamellar and Crystalline-Core Thickness of the Poly(3-oxytrimethylene) Edge-On Kamekkae Crystallized Epitaxially from Solution onto Alkali Halides"Preprints of International Symposium on Polymer Crystallization. 20-23 (2002)
• [文献書誌] Yoshitsugu Ohtani, Kenji Okumura, Akiyoshi Kawaguchi: "Crystallization of poly-L-lactide from the amorphous state"Preprints of International Symposium on Polymer Crystallization. 124-125 (2002)
• [文献書誌] Daisuke Yuya, Toshinori Kikuchi, Akiyoshi Kawaguchi: "Nucleation of isotactic polypropylene under shear"Preprints of International Symposium on Polymer Crystallization. 134-135 (2002)
• [文献書誌] Taiyo Yoshioka, Masaki Tsuji, Yutaka Kawahara, Takeshi Kikutani 他: "Structural Studies of the High-Speed Spun Polyester Fobers"Preprints of International Symposium on Polymer Crystallization. 212-213 (2002)