研究概要 |
本特定領域プロジェクトの最終年度において、本プロジェクト主催で「高分子の結晶化」というテーマで国際会議が開かれた(2002年6月9日-12日、静岡県三島市)。本会議には、われわれの研究班かち2件の口頭発表と4件のポスター発表をした。その他国際会議(高分子物理の国際シンポジウウム(206年7月2日,青島、中国)に1件、および国内の学会、討論会等に9件の研究発表を行った。 多くの研究課題で研究を行ってきた。本研究の重要な研究成果を以下に示す。 1)ポリエチレンオキシドを溶液からアルカリハライド結晶の上に結晶化させたときに、拡散律速凝集体(DLA)が形成されるごとを見出し、その構造を明らかにしてきた。高分子の結晶化には、「拡散」が重要な役割を演じており、本プロジェクトでの一課題として取り上げられているが、この拡散の影響がDLAの形で具現化されたのは、高分子の世界では最初である。 2)ポリ・L・乳酸の非晶を熱処理によって結晶化させたとき、低温での熱処理ではβ型、高温ではα型の結晶が形成されること、また、β結晶は高温でα結晶に転移することを見出した。ポリ・L・乳酸の結晶転移で問題になっていたことを明らかにした。これまで高分子非晶の結晶化の問題は余り扱われてこなかったが、この契機で非晶高分子の結晶化の重要性を認識した。 3)高速紡糸の研究は、工業的に重要な課題であるが、その過程で発現する構造については殆ど分かっていなかった。本プロジェクトの他の研究班との連携研究の一環として、われわれの班は生成したPEN(ポリエチレンナフタレート)の糸を電子顕微鏡、AFMで観察することによって構造を解明することを担った。この系では、異なる結晶構造が存在し、紡糸速度の違いによって、これら構造の発現の仕方が違うことを明らかにした。
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