平成12年度の目標は、不活性分子の凝縮体表面に焦点を絞り、この系で展開される様々な現象-例えば、吸着分子間相互作用、凝集機構、化学反応-を明らかにすることである。 Ni(111)表面に凝縮させたKr、Xe原子層の電子状態についてメタステーブル原子電子分光による解析をおこなった。その結果、希ガスの原子層が数層になると、凝集相は結晶相と同様に、絶縁体になる。ここでは、He^*(2^3S)ほぼ完全にペニングイオン化過程を経て脱励起し、価電子バンドのみが観測にかかる。ところが、1-2層の領域では、価電子バンドからの1電子放出以外の構造も出現することが分かった。これは層の厚さによって、凝集体表面最外層の電子状態が変化することを示す。詳細な解析を始めている。 また、このような不活性分子の凝縮体表面への吸着現象に対して予備的な実験をおこなった。最も単純な系としてXe凝縮層へのAr吸着を測定し、バンド幅や凝集機構について考察を進めている。装置面では、μメタルチャンバーの設計をおこない、現在、振動解析用のHREELS装置とともに製作中である。さらに、次年度の研究課題に備えて、トリクロロメタン、トリフルオロメタンの気相におけるスペクトルの測定を終えた。
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