研究概要 |
1.結晶性氷表面の振動分光 超高真空条件下においてPd(111)基板上に氷超薄膜を結晶成長させ、高分解能電子エネルギー損失分光(EELS)を用いて氷表面における表面局在振動を測定した。128Kで作成した10バイレーヤー(40Å)の結晶性氷薄膜の表面水分子の束縛並進振動(光学フォノン)に起因する損失ピークを100cm^<-1>に観測した。また束縛回転振動に起因する損失ピークを665,825,890cm^<-1>に観測した。これら氷表面における分子間振動は氷成長や表面融解といった興味深い現象と関係しており、実際バルクに比べて表面では水分子間の結合が弱くなっていることが明らかとなった。 2.氷表面における水分子と氷結晶の成長過程 氷表面に飛来した水分子は結晶化して氷を形成する。この結晶化の過程をEELSを用いて観測を行った。その結果、85Kでは水分子は結晶化できずに、準安定な状態で表面に吸着する。この吸着水分子の観測に始めて成功した。128Kに温度が上がると、吸着水分子は活性化され結晶化が起こる。 3.STMによる水分子の単分子観測 既存の走査トンネル顕微鏡(STM)装置を改良し、非弾性トンネル分光ができるように努めた。まだデータは出ていないが、問題点が明らかとなり今後の課題として取り組んでいく。 4.ダイアモンド表面上の反応 アルカリ金属で修飾したダイアモンドC(100)(2×1)-K表面上の、酸素と一酸化炭素の吸着状態と反応をEELSを用いて調べた。
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