水分子凝集体表面への分子吸着と反応

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12128205
• 研究種目: 特定領域研究(B)
• 研究機関: 理化学研究所
• 研究代表者: 川合 真紀 理化学研究所, 表面化学研究室, 主任研究員 (70177640)
• 研究分担者: 堀本 順子 理化学研究所, 表面化学研究室, 基礎科学特別研究員 (40322672) ; 加藤 浩之 理化学研究所, 表面化学研究室, 研究員 (80300862) ; 小笠原 寛人 理化学研究所, 表面化学研究室, 研究員 (50270591)
• キーワード: 水分子 / 凝集体 / 氷表面 / 水素結合 / 吸着 / 反応 / 大気化学 / 振動分光

研究概要

金属表面に形成した氷の表面をモデルとして、水凝集体表面と気体分子の相互作用に関する研究を進めている。これまで、親水性である極性分子が水凝集体に溶解する場合には、表面にある孤立OH基が先駆的な準安定状態を作り、溶解を促していることを示してきた。これに対し、今年度は、疎水性である非極性分子が氷表面に取り込まれる過程を詳細に調べ、氷表面のモフォロジー変化が重要な要因となっていることを突きとめた。実験では、温度を制御して作成した形態の異なる氷表面に非極性分子であるメタン分子を吸着させ、その取り込まれる過程を赤外反射吸収分光と昇温脱離法を併用し観測した。これによると、メタン分子に対する安定サイト(pore)は、氷の温度上昇により段階的に消失うことから、少なくとも2種類のサイトが存在し、非極性分子と氷表面の相互作用は段階的に小さくなっていく事を明らかにした。
また今年度は、今後の研究の基礎として、いくつかの新しい実験に取りかかった。その一つが、走査プローブ顕微鏡による水凝集体の微視的観察である。低温に冷やした金属表面に水分子が吸着すると、安定した構造の水クラスターが形成される。それをトンネル分光の手法を用いることで、水分子間のサイト選択的な相互作用の研究が期待できる。くわえて、室温に近い領域では、気相-吸着相間の平衡状態における観測を行える可能性があり、物質表面の濡れ性などに関する微視的研究を目指す。

研究成果

• [文献書誌] H. Ogasawara, M. Kawai: "Photochemistry of CFCI_3 on ice surface : surface chlorine reservoir species"Surface Science. (In press). (2002)
• [文献書誌] N. Horimoto, H.S. Kato, M. Kawai: "Stepwise morphological change of porous amorphous ice films observed through adsorption of methane"Journal of Chemical Physics. (In press). (2002)
• [文献書誌] S. Masuda, R. Suzuki, M. Aoki, Y. Morikawa, R. Kishi, M. Kawai: "Spatial electron distribution of CO adsorbed on Ni(100) and Ni(111) surface probed by metastable impact electron spectroscopy"Journal of Chemical Physics. 114・19. 8546-8554 (2001)
• [文献書誌] Y. Kim, H.S. Kato, T. Komeda, M. Kawai: "Investigation of ID chain formation of CO on Pd(110) by low temperature scanning tunneling microscope"Surface Science. 482-485. 60-65 (2001)
• [文献書誌] T. Komeda, Y. Kim, M. Kawai: "Scanning tunneling microscopy observation of CO on Pd(110) at Cryogenic temperature ; imaging mechanism and novel one-dimensional array formation"Japanese Journal of Applied Physics. 40・6. 4403-4408 (2001)
• [文献書誌] H. Ogawasara, S. Ichihara, H. Okuyama, K. Domen, M. Kawai: "Orientation of unsaturated hydrocarbons on Pd(110)"Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena. 114-116. 339-343 (2001)
• [文献書誌] F. Pichierri, T. Iitaka, T. Ebisuzaki, M. Kawai, D.M. Bird: "First-principles pseudo-potential study of the Pd(110)-c(2x2)-ethylene adsorbed system"Journal of Physical Chemistry B. 105. 8149-8154 (2001)