金属を含む液晶の構造形成と機能

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12129205
• 研究種目: 特定領域研究(B)
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 太田 和親 信州大学, 繊維学部, 助教授 (70160497)
• 研究分担者: 松瀬 丈浩 信州大学, 繊維学部, 助教授 (30027354) ; 宇佐美 久尚 信州大学, 繊維学部, 助手 (60242674) ; 木村 睦 信州大学, 繊維学部, 助手 (60273075) ; 高口 豊 信州大学, 繊維学部, 助手 (10293482)
• キーワード: 金属錯体 / 液晶 / ディスコティック液晶 / フタロシアニン / マイクロ波 / イオン対型液晶 / デンドリマー

研究概要

長鎖アルキルチオ基を導入したフタロシアニン(PC)Eu,Tb,Lu金属錯体液晶を合成し、これらが新規なディスコティック液晶相を示すことを見いだした。この液晶相は0.71cm^2/Vsの高速電荷移動度を示す。ジアルコキシフェニル基を導入したPcCu錯体ではCol_<tet>相で完璧な自発的ホメオトロピック配向を示す。また4本の長鎖アルコキシ基を導入したジチオレン系Ni錯体の液晶性とそのサーモクロミズムを確立した。
液晶性Pc金属錯体が形成する1次元カラム構造を固定化する目的で、有機・無機複合体の合成を行った。新規にオリゴエーテル鎖を持つ液晶性Pc金属錯体を合成し、酸性条件化テトラエトキシシランの重合を行うことにより有機・無機複合体を合成した。X線およびTEM観察などにより、この複合体の構造について詳細に検討を行った。
導波管の特性を利用するとマイクロ波加熱された液体の温度を熱電対を用いて安全に測定出来ることが示せたので、制御されたマイクロ波加熱装置を開発した。それを標準的Pc合成に応用すると、数分間のマイクロ波照射で高収率の銅などの金属Pcを合成するこが出来ることが分かった。
N-メチルスチルバゾリウムイオンと二鎖型および一鎖型の陰イオン性界面活性剤とのイオン対を合成し、二鎖型のジアルキルスルホ琥珀酸とのイオン対ではスメクチックA相を、一鎖型のアルキル硫酸とのイオン対ではスメクチックEおよびA相を示すことを明らかにした。単独では液晶性を示さない分子をイオン結合にて結合し協同的に液晶性を発現できる。
デンドリマー型置換基を持つアントラセンが液晶性分子であることを明らかとした。さらに、その液晶相はスメクチックE相であり、分子間でアントラセン同士がスタッキングしていること、更に高圧水銀灯照射により非常に珍しい液晶中における光[4+4]付加環化反応が進行することを明らかとした。

研究成果

• [文献書誌] Y.Takaguchi,T.Tajima,K.Ohta,J.Motoyoshiya,and H.Aoyama: "Photoresponsive Dendrimer : Syntheses and Characterizations of Anthracenes Bearing Dendritic Substitutents"Chem Lett.. 1388-1389 (2000)
• [文献書誌] K.Ban,K.Nishizawa,K.Ohta,A.M.van de Craats,J.M.Warman,I.Yamamoto and H.Shirai: "Discotic Liquid Crystals of Transition Metal Complexes 29 : Mesomorphism and Charge Transport Properties of Alkylthio-substituted Phthalocyanine Rare-earth Metal Sandwich Complexes"J.Mater.Chem. 11. 321-331 (2001)
• [文献書誌] K.Hatsusaka,K.Ohta,I.Yamamoto and H.Shirai: "Discotic Liquid Crystals of Transition Metal Complexes, 30 : Spontaneous Uniform Homeotropic Alignment of Octakis (dialkoxyphenoxy) phthalocyaninato Copper (II) Complexes"J.Mater.Chem.. 11. 423-433 (2001)
• [文献書誌] H.Horie,A.Takagi,H.Hasebe,K.Ohta and I.Yamamoto: "Discotic Liquid Crystals of Transition Metal Complexes, 31 : Establishment of Mesomorphism and Thermochromism of Bis[1,2-di(4-n-alkoxyphenyl)ethane-1,2-dithiolene]nickel Complexes"J.Mater.Chem.. (in press).
• [文献書誌] M.Kimura,K.Wada,K.Ohta,K.Hanabusa,H.Shirai and N.Kobayashi: "Organic Inorganic Composites Comprised of Ordered Stacks of Amphiphilic Molecular Discs"J.Am.Chem.Soc.. (in press).