回折および分光手法による酸化物表面での局在量子構造解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12130201
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 松原 英一郎 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90173864)
• 研究分担者: 中嶋 一雄 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80311554) ; 佐藤 修彰 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教授 (70154078) ; 村松 淳司 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40210059) ; 林 好一 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (20283632) ; 櫻井 雅樹 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (80235225)
• キーワード: 光触媒 / チタン酸化物 / 薄膜 / 部分硫化 / 蛍光X線ホログラフィー / 局所格子歪み / 局所構造評価 / 放射光

研究概要

放射光およびX線による回折・分光手法を用いて決定される物質の局所原子構造や結合状態から、理論計算グループ(A01班)および分析電子顕微鏡評価グループ(A02班)など他班と連携し、局在量子構造を決定して、各材料の特性向上、新機能発現のための設計・開発を行った。主要な成果を以下に挙げる。
(1)部分硫化チタン酸化物の局在量子構造制御による高効率光触媒薄膜の実現
雰囲気制御型レーザーアブレーション法を用いて、二硫化炭素や硫化水素といった硫黄を含んだ化合物のガス雰囲気圧を厳密に制御することにより、可視光領域に広い光吸収を持つ部分硫化チタン酸化物薄膜の成膜を初めて成功した。さらに、高い光効率を示すものの光溶解現象により劣化してしまう硫化物の宿命を、構造および最適膜厚に制御したチタン酸化物膜でキャップすることにより改善し、光触媒能を劣化すことなく経時変化しにくい薄膜の成膜方法を提案し実現した。また、この機構についてA01班と連携し解明した。
(2>蛍光X線ホログラフィー法の高度化による局所格子歪みの3次元評価技術の実現
蛍光X線ホログラフィー技術の実験的な問題である双画像問題を実験的に解決するための手法として、本手法と異常散乱現象を組み合わせた方法をを理論的に予測した。そして、この方法を実際にGaAs結晶を用いてデモンストレーションすることに成功した。これにより、3次元原子配列を正確に記述する上で不可欠な位相問題を解決することができた。また、この手法の副次的な利点として、蛍光X線を発生する元素の周りの元素をも識別することができることを見出した。この方法により、歪みのない3次元原子像の実験的な測定実現に向けて一歩前進した。

研究成果

• [文献書誌] Takahashi Y, Hayashi K, Matsubara E, et al.: "A new technique for study of local atomic environment in artificially grown magnetic thin film"Scripta Materialia. 48. 975-979 (2003)
• [文献書誌] Hayashi K, Takahashi Y, Matsubara E, et al.: "3D atomic imaging of SiGe system by X-ray fluorescence holography"Journal of Material Science : Materials in Electronics. 14. 459-462 (2003)
• [文献書誌] Y.Takahashi, K.Hayashi, E.Matsubara: "Complex x-ray holography"Physical Review B. 68. 052103-1-052103-4 (2003)
• [文献書誌] Alguno A, Usami N, Ujihara T, et al.: "Enhanced quantum efficiency of solar cells with self-assembled Ge dots stacked in multilayer structure"Appl.Phys.Lett.. 83. 1258-1260 (2003)
• [文献書誌] Usami N, Ichitsubo T, Ujihara T, et al.: "Influence of the elastic strain on the band structure of ellipsoidal SiGe coherently embedded in Si matrix"J.Appl.Phys.. 94. 916-920 (2003)
• [文献書誌] Nakamura T, Arata M, Takahashi H, et al.: "Partial sulfurization of laser-ablated titanium oxide film for the improvement in photocatalytic property"Materials Transactions. 44(4). 685-687 (2003)