セラミックス粒界の局在量子構造

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12130202
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 佐久間 健人 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (50005500)
• 研究分担者: 松永 克志 東京大学, 工学部・附属総合試験所, 助手 (20334310) ; 山本 剛久 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (20220478) ; 幾原 雄一 東京大学, 工学部・附属総合試験所, 教授 (70192474) ; 吉田 英弘 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助手 (80313021)
• キーワード: 局在量子構造 / アルミナ / 高温強度 / 粒界構造 / 高分解能像 / 電子状態 / 酸化亜鉛 / 双結晶

研究概要

本年度は、微量添加構造用セラミックスの粒界すべり特性と高温強度特性、および、電子セラミック材料の粒界構造と電気特性に関し、主に、透過型電子顕微鏡による原子・電子構造解析を主体とした解析評価を行った。構造用セラミックスについては、アルミナに希土類元素を100ppm〜1000ppm添加した焼結体を作製し、その高温クリープ特性と粒界電子状態との相関性を調べた。種々の希土類元素について耐クリープ特性を調べたところ、Luイオン添加が耐クリープ特性の向上について最も効果的であることが見出された。この粒界について電子状態を評価したところ、酸素Kエッジに特徴的な変化が測定された。このスペクトルの解釈を行うために構造モデルを基本とした第一原理計算を行ったところ、Lu添加により、Luイオンの周囲のイオンから電子がLuイオンへ局在化する傾向にあることが分かり、この局在化が粒界強度の向上に起因するものと結論できた。今後、計算的手法を駆使し、さらに耐クリープ特性向上に効果的なイオンの探索を進める。
一方、電子セラミックについてはZnO双結晶を作製しその粒界構造と粒界原子構造、特に、添加イオンとの関連性について調べた。その結果、無添加双結晶については、粒界構造とは無関係に粒界電気特性に異常は生じず、いずれの方位関係においても単結晶と同様なオーミック特性が発現することを突き止めた。また、バリスタ特性発現に効果的と考えられているPrイオンのバリスタ特性に及ぼす影響を系統的に調べたところ、粒界構造の整合性が低下するに従いPrの偏析量が増加し、それとともに、バリスタ特性が顕著となる結果が得られた。今後、この添加効果について、計算的手法にもとずいた電子状態計算を行っていく予定である。

研究成果

• [文献書誌] H.Yoshida: "High-temperature Grain Boundary Sliding Behavior and Grain Boundary Energy in Cubic Zirconia Birystals"Acta Mater.. 印刷中. (2004)
• [文献書誌] H.Yoshida: "XAFS Study on the Fine Structure of Lutetium Segregated at Grain Boundaries in Fine-grained, Polcrystalline Alumina"Phil.Mag.. 印刷中. (2004)
• [文献書誌] K.Nakatani: "The Effect of Grain Boundary Segregation on Superplastic Behavior in Cation-Doped 3Y-TZP"Scripta Mater.. 49. 791-795 (2003)
• [文献書誌] K.Matsui: "Cubic-formation and Grain-growth Mechanism in Tetragonal Zirconia Polycrystal"J.Am.Ceram.Soc.. 86. 1401-1408 (2003)
• [文献書誌] H.Yoshida: "Small Dopant Effect on High Temperature Plasticity and Grain Boundary Quantum Structure in Oxide Ceramics"Research Advances in Ceramics. 1. 11-23 (2003)
• [文献書誌] H.Yoshida: "Lutetium-doping Effect on the Grain Boundary Diffusional Creep in Polycrystalline Al_2O_3"J.Euro.Ceram.Soc.. 23. 1795-1801 (2003)
• [文献書誌] 吉田英弘: "粒界量子構造制御による高温セラミック材料の開発"機能材料. 23. 35-42 (2003)
• [文献書誌] H.Yoshida: "Grain Boundary Electronic Structure and High Temperature Plastic Flow in Polycrystalline Al_2O_3"Key Eng.Mter.. 247. 263-266 (2003)
• [文献書誌] Yukio Sato: "Grain Boundary Dependency of Nonlinear Current-Voltage Characteristics in Pr and Co doped ZnO Bicrystals"J.Appl.Phys.. 95. 1258-1264 (2004)
• [文献書誌] Fumiyasu Oba: "Current-Voltage Characteristics of Co-Doped Inversion Boundaries in Zinc Oxide Bicrystals"J.Am.Ceram.Soc.. 86. 1616-1618 (2003)
• [文献書誌] Yukio Sato: "Al-doped ZnO Ceramics Fabricated by Mechanical Alloying and High-Pressure Sintering Technique"J.Mater.Sci.Lett.. 22. 1201-1204 (2003)
• [文献書誌] Tomohito Tanaka: "First-principles study on structures and energetics of intrinsic vacancies in SrTiO_3"Phys.Rev.B.. 68. 205213 (2003)