研究概要 |
本研究班では,局在量子構造の関与する複雑系についてのシミュレーションを行い,実験と密接な連携を行うことを目的としている.計算手法は主に平面波基底の第一原理擬ポテンシャル法を採用し,必要に応じて,原子軌道関数基底でのバンド計算を併用した.本年度としての成果を以下に箇条書きにする. 1)ZnOおよびMgO中のAlおよびGa溶質元素の存在状態を第一原理計算で予測したうえで,本グループにてppmオーダーの不純物添加系を系統的に作製し,陽イオン空孔と不純物との相互作用を阪大グループとの共同研究での陽電子寿命測定により直接的に検証した.このようなextrinsitc要因の陽イオン空孔の生成をppmレベルで直接検証したのは世界ではじめての成果である. 2)民間企業との共同研究でスピネル型LaCrO3中のCr空孔の生成についての理論計算を行った.この結果は,酸化物固体燃料電池(SOFC)のセパレータの材料設計に有用である. 3)XANES/ELNES理論計算法を,米国ミズーリ大のChing教授らとの共同研究で確立し,酸化物系,窒化物系などで多くの応用例を示した. 4)PPmオーダーの不純物を添加したZnOおよびMgO系について,SPring8でのXANES実験を行い,超微量元素の定量的な状態分析技術を確立した. 5)新規リチウムイオン導電体の探索を,実験と理論計算の連携によって進めた。 これらは,すべて,特定領域の研究グループ間での密接な連携のもとに成り立っている.
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