本研究では、申請者が世界に先駆けて開発した左右円偏光光源を用いた高速複屈折測定法を近接場光学顕微鏡に応用してナノ・マイクロマシンにおける構成材料や構造体の複屈折を非破壊的にかつ高空間分解能で評価測定できるシステムを開発することを目的とする。具体的には、第一に高速複屈折測定法を照明型近接場光学顕微鏡に適用するために、それに用いる最適な光プローブの開発および分解能を評価する。第二に、波長可変左右円偏光光源を開発して複屈折分散特性を測定できる分光分析複屈折近接場光学顕微鏡を開発し、様々なナノ・マイクロマシン材料の評価に対応できるシステムを開発する。 この目的を達成するため、今年度はプローブとしてガラス細管を炭酸ガスレーザーによって溶融延伸させて製作したマイクロピペットに着目し、100nm以下の開口を持つピペットの製作法を確立するとともに、出射光の偏光特性を実験的に明らかにした。さらに、FDTD電磁場解析ソフトウェアによって開口部近傍における円偏光出射特性を解析し、実験結果との比較を行った。また、開発したプローブを用いて複屈折近接場光学顕微鏡システムを製作し、その性能評価のために光磁気ディスクにおけるプリフォーマット部の応力分布を可視化することに成功し、プリフォーマット部の応力がグルーブ部に影響を与えている知見が得られた。これは、従来プリフォーマット部の隣接するグルーブの読み出し情報に周期的な誤差信号が含まれている原因を特定することが出きる有力な技術情報であり、今後のMOディスクの性能改善に大いに貢献できるものと考えられる。
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