本研究では、申請者が世界に先駆けて開発した左右円偏光光源を用いた高速複屈折測定法を近接場光学顕微鏡に応用してナノ・マイクロマシンにおける構成材料や構造体の複屈折を非破壊的にかつ高空間分解能で評価測定できるシステムを開発することを目的とする。具体的には、第一に高速複屈折測定法を照明型近接場光学顕微鏡に適用するために、それに用いる最適な光プローブの開発および分解能を評価する。第二に、波長可変左右円偏光光源を開発して複屈折分散特性を測定できる分光分析複屈折近接場光学顕微鏡を開発し、様々なナノ・マイクロマシン材料の評価に対応できるシステムを開発する。 今年度においては、前年度製作した複屈折近接場光学顕微鏡の観測空間分解能を評価するため、光磁気ディスクのプレフォーマットピットを観測した。その結果、200nmの複屈折横分解能が得られていることが明らかとなった。しかしながら、光ファイバープローブの先端半径は100nm以下であることを考慮すると、更なる分解能の改善が必要である。この点については使用するプローブを選択化学エッチングによる方法などを導入する事が考えられる。 一方、今年度においては、複屈折試料の分光特性を観測するたに波長可変左右円偏光レーザーの開発を計画したが、現段階で入手できるチタンサファイアーレーザーの可変波長範囲は、600nm〜1000nmと狭く、またこの波長に適合できる周波数シフターも入手できない等の問題があることが分かった。そこで、複数の可視レーザーと2分の1波長板、液晶位相シフターを組み合わせた多波長可変偏光レーザーを開発することにした。その結果、どのような偏光状態でも再現でき、かつ波長をスイッチできる新規な光源を開発することに成功した。この光源は、全く新規なアイデアに基づくものであって、本研究にとどまらず様々な偏光計測に利用できるポテンシャルを持つと考えられ、現在、応用分野について検討中である。
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