研究概要 |
細胞は多種類のコンパートメント(生体膜 胞)から成るミクロのコンビナートである。この構築機構を探るために、人工膜小胞(リポソーム)の内部に細胞骨格ネットワークを再構築させて、膜系に基づくナノマシンシステム(人工細胞)を創製することは、バイオ工学にとって魅力的かつ緊急の課題である。その際に不可欠な、ミクロな膜小胞の形態制御とトポロジー変換の技術を確立することを目的とする。そのために、細胞骨格や生体膜を、溶液中で同時に直視できる実験系を高輝度暗視野光顕を利用して開発する。 1,超薄液晶膜小胞(リポソーム)の力学的応答測定技術の開発 リポソームにラテックスビーズ(直径=1mm)を取り込ませる方法を確立し,ビーズを2個取り込んだリポソームを選び、新しく構築したダブルビームのレーザーツイーザーシステムを用いて片方のビーズに機械的張力を加え、その形態応答を可視化・制御した。 その結果、張力によってリポソームはまずレモン型に変型し、さらに力を大きくすると管状の突起が形成されることが判った。フォスファチジルコリンを含む脂質二重層膜から成るリポソームでは、突起形成に必要な力は〜50pNであった。 2,微細操作の可能なる倒立暗視野照明法の開発 リポソームなどの生体関連構造は溶液中で操作・観測できることが必須である。しかし、リポソーム膜の厚さは、わずか5nmである。したがって、その十分な可視化は暗視野法によらざるを得ない。一方、従来の暗視野コンデンサーを使った手法では対象分子の機械的操作は不可能である。そこで、倒立顕微鏡の試料中に、水銀燈光源による照明光を光ファイバーを用いて導入した(レーザー光は干渉像が生じるので採用しない)。その結果、照射光に対して直角方向の膜成分は可視化出来たが、全体像を得るまでには至っていない。多方向から照射する方法を探索しているところである。
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