赤外顕微鏡と昨年度作製した原子間力顕微モジュールおよび微小開口型カンチレバーを用いた赤外近接場分光システムの設計、試作を行った。光源にはオプティカルパラメトリック差周波発生システムと赤外自由電子レーザー(FEL-SUT)を用い、波長3〜16μmの赤外パルス光を利用した。まず、カンチレバーの微小開口部の赤外パルス光強度に対する耐性を検証し、赤外顕微鏡導入時のパワーとして0.22mJ以下であれば、開口部が破壊されないことを確認した。この値は微小開口部では2.8μJ/μm^2に相当する。つづいて、構築した赤外近接場光学顕微システムの空間分解能を評価した。BaF_2基板上に作製した微細周期構造(周期4μm)を試料に用いた。近接場検出を行うことで、波長11μmの赤外光を用いても、この周期構造が観察できることを確認し、試作した装置が超解像性を有することを示せた。さらに、レーザー波長を掃引してPMMAフィルムの透過光量を測定し、C=O結合による1750cm^<-1>付近の吸収スペクトルを近接場計測することに成功した。 また、光ナノ加工技術の開発をめざして、金属プローブ先端に形成される局所増強場による光加工を試みた。プラチナコートしたカンチレバーをプローブとし、これをポジ型フォトレジストにコンタクトさせ、GaN半導体レーザーを照射した。その結果、フォトレジストフィルムに100nm幅のトレンチ構造を作製することができた。局所的な増強効果を利用したことで、ファーフィールド加工での閾値(28.5mJ/cm^2)よりも低い照射エネルギー(6.3mJ/cm^2)で加工できることを確かめた。
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