研究概要 |
平成14年度は,まず近接場光描画装置の改良を行った.走査範囲での焦点位置ずれを補正するための共焦点顕微機能を付加し,走査領域全面で0.3μm以内に焦点位置ずれが補正可能となり,レンズの焦点深度以内に焦点を制御可能となった.これにより超解像近接場構造を用いた近接場光描画が十分可能とするレーザ描画が可能であることを確認した.また,超解像近接場構造の微小開口を観測するための走査型近接場光学顕微鏡を備品として購入したRFロックインアンプにより,高速観察できるよう改良した.これにより,従来の約50倍程度高速化が実現できた.次に,Inをサーモクロミック層として用いた超解像近接場構造を作成し,実際に描画を行ったが,サーモクロミック層の透過率が変化して微小開口を形成する前にサーモクロミック層の透過光によりレジストが感光してしまい,超解像描画ができないことが判明した.そこで,レジストの最適化を検討したが,レーザ波長に適応するレジストは製造中止となっており入手が不可能であった.そのため,超解像近接場構造におけるサーモクロミック層とレジストの間の保護層について材料と膜厚を変化させ最適化を行った.これにより微小開口形成時にレジストに入射するレーザパワーを半分程度に低減できることを実験より確認した.また,In層でのレーザの吸収を増加させるためにIn層上部に吸収の大きな層を設けそこで吸収した熱をInに伝導することでレジストへの入射レーザパワーを低減することを考案し,実験を行った.これにより,微小開口形成時のレジストへの入射レーザパワーを約半分程度に抑えることができることが確認できた.しかしながら,吸収層は反射率も高いためこれらを用いて近接場光描画を実現するにはさらに高出力のレーザが必要となるため,来年度さらに出力の高いレーザを用いることで上記効果を検証する.また,熱によらないフォトンモードのフォトクロミック材料を用いた新しい超解像近接場構造による近接場光露光法の実現も目指す. 3次元構造体の微細エッチング法として電子ビームを試料に直接照射し,それによる自己バイアスによりシリコン酸化膜をエッチングする装置を構築し,その特性評価を行った結果,120nm/min程度と従来の高速原子線エッチングより数倍高速なエッチングが可能であることが判明した.さらなる高速化を図るためにプラズマ診断を行った結果,電子ビーム電流をさらに高くしてプラズマ密度を上げ,尚且つ熱ダメージを軽減する必要があるという重要な知見を得た.最終年度は,これらの知見を基にした新しい超解像描画法と新しいプラズマ制御法を提案し,その有用性を実証する.
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