研究概要 |
運動障害性構音障害症例の評価 昨年度に引き続き,パーキンソン病、仮性球麻痺、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの運動障害性構音障害症例の音声障害の程度や症状を客観的に評価する方法を確立し、さらにその成果をリハビリテーションへ活用することを目指して、症例音声について,特に分節的特徴の側面から検討した。その結果、新しく開発したARX分析合成法によって抽出した母音部のフォルマント周波数が構音障害の特性を反映していること,さらに臨床的に広く使われている「モノトーンな」聴覚印象の実体を,ARX分析合成音声の知覚実験によって調べ,フォルマントなどの分節的特徴よりは,アクセント・イントネーションなどの韻律的特徴に関係した聴覚印象であることなどを明らかにした。なお,本研究の助成を受けて開発したARX分析合成法は平成15年度日本音響学会論文賞に選奨された。 食道発声音声の声質変換技術の開発 食道音声は、粗造性(rough)声質や平板で極端に低い基本周波数といった韻律障害を伴うため、発話の了解性や聞きやすさの評価が低い。そこで、男女性の症例について、了解性と聞きやすさを向上させるのに適した分析合成法を選定するために,ARX音声分析合成法,メルケプストラム分析合成法を取り上げ,検討した。その結果,基本周波数が安定している師範級話者の場合は,ARX分析合成法,不安定な場合はメルケプストラム分析合成法が適切であることが分かった。また,基本周波数がいたるところ不安定な場合は,自動的に生成する可能性も検討した。 基周波数制御の可能な人工電気喉頭の開発 市販の電気人工喉頭を改良して、指の押圧と左右(あるいは前後)移動操作が可能な2自由度操作モデルを開発し,イントネーションの制御実験を行った。その結果,短時間の訓練で,疑問・質問のための上昇基本周波数制御も含めて,イントネーションの制御が可能であることを明らかにした。
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