研究概要 |
強誘電体薄膜の物理現象をミクロに解明するには,原子・分子レベル(双極子モーメントレベル)まで解析可能な分解能を持つ強誘電体評価システムを用いた実験手法が必要である.そこで世界で最高分解能の強誘電分極評価技術である走査型非線形誘電率顕微を用いミクロなドメインや誘電特性とマクロな物性との関係を明らかにしてくこと目的とし,特に前半の2年では非線形誘電率顕微鏡の高分解能化高機能化を果たすことを目標にあげている.これまでに得られた成果を要約すると,まず顕微鏡の高分解能化高機能化では以下のように大別して四つの成果をあげた. 1)サブナノメータ領域で強誘電体の分極を可視化できる超高分解能走査型非線形誘電率顕微鏡システムを開発した. 2)より分解能が向上する高次非線形誘電率顕微鏡の開発に成功し,強誘電体表面に自然に成長した1ないし2ユニットセルの厚さをもつ常誘電層の観測に成功した.この技術の開発により,強誘電体の表面を観測すると,ほぼ必ずといっていいほど非常に薄い強誘電性のない表面層が存在することが分かった.この表面層の存在はFeRAMのスイッチング電圧を上げるように働くため,今後更なる高集積化高密度化を図るときに重要な間題となることが予想される. 3)横方向の分極も計測できる3次元分極計測用新型走査型非線形誘電率顕微鏡の開発に成功した.これにより総ての方向の分極のナノスケールでの観測が司能となった. 4)非線形誘電率顕微鏡の垂直距離分解能を明らかにし,STM並またはそれ以上の感度があることを発見した. 次にこれら新開発の顕微競を用いた強誘電体のナノサイズドメインやその構造解析の研究を一部スタートさせ,PZT薄膜やストイキオメトリックLiTaO_3単結品中へ10〜20nm程度の大きさの人エナノドメインを作製し印加電圧及び電圧印加時間とドメインドットの大きさをそれぞれ調べた.
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