研究概要 |
強誘電体薄膜の物理現象をミクロに解明するには,原子・分子レベルまで解析可能な分解能を持つ強誘電体評価システムを用いた実験手法が必要である.そこで世界で最高分解能の強誘電分極評価技術である走査型非線形誘電率顕微(SNDM)を用いミクロなドメインや誘電特性とマクロな物性との関係を明らかにしてくこと目的とし,前半の2年では非線形誘電率顕微鏡の高分解能化高機能化を果たすことを目標にあげほぼその目的を達した. そこで後半の初年度である平成14年度の研究では13年度までに開発に成功した高性能なSNDMを用いミクロな強誘電物性を研究した.まずナノ・サイズ・次元の研究の一環として定比LiTaO_3及び一致溶融組成のLiTaO_3おける微小分極反転領域の生成に関する実験を行った.その結果,実記録密度で1.5Tbit/inch^2の面密度をもつナノドットアレイの作製に成功した.これは電気的に書き換え可能な記録としては世界最高の密度である.またナノ分極ドットの高速反転特性を調べ探針下でナノドメイン反転を行ってもナノセカンドオーダーの高速スイッチングが可能であることが明らかになった.更に本研究の発展形として,強誘電体高密度データストレージシステムの試作も行った. また,これらのナノドメインドットの反転過程を実時間で観測できるSNDMを開発し,分極と逆向きにパルスを印加しても,ナノ分極反転ドットが形成されるという新しい現象を発見した. 最後に非線形誘電率顕微鏡SNDMの高機能化として,温度可変型走査型非線形誘電率顕微鏡を開発し,BaTiO_3単結晶の相転移前後の線形・非線形誘電率分布のミクロな変化を計測し相転移点以上でも非線形誘電率が局所的に存在していることを明らかにした.
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