研究概要 |
本年度の研究計画に基づき,Pb(Zr,Ti)O_3(PZT)薄膜の成長機構を詳しく調べるとともに,成長初期に形成される島状核の強誘電性,また島状核を用いたグレインサイズの制御や低温成長技術について主に検討を行った。 1.強誘電体PZT薄膜のMOCVD成長の過程を詳細に調べた。Pt/SiO_2/Si基板上では,非常に小さな結晶核が二次元的に成長して大きくなり,さらに合体して連続膜を形成する様子がAFMにより観察された。TEM観察からは初期に形成されるナノサイズのPZT核が正方晶もしくは菱面体晶に起因するツイン構造を有することがわかった。さらにSPMを用いた圧電振動応答測定では,PZT核が強誘電性を示すことがわかった。また,ラマン分光による測定からも強誘電性の存在を確認できた。一方,原子層ステップを有するSrTiO_3(100)単結晶基板上では,最表面の原子配列により,層状もしくは島状に成長する様子が観察された。また,SrRuO_3/SrTiO_3(100)基板上では層状成長した後にPZT島が形成された。 2.PbTiO_3結晶核をシードに用いた二段階成長法により,400℃という低温でペロブスカイト単相のPZT薄膜が得られた。また,PbTiO_3結晶核の挿入により,グレインサイズは減少し,表面の平坦性は向上した。さらに,電極及びPZT薄膜のすべてをMOCVD法により400℃以下で作製した強誘電体キャパシタにおいても強誘電性が観察された。 3.SPMを用いた圧電応答測定による分極反転領域の形成過程の観察では,グレインバウンダリ近傍で分域壁の移動速度が低下する現象が観察された。一方,グレインバウンダリを持たないエピタキシャル膜では分域壁の移動を妨げる要因は見られなかった。
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