研究概要 |
当該年度は,Pb(Zr, Ti)O_3(PZT)薄膜の低温成長,MOCVD法のみによる電極/強誘電体/電極キャパシタの低温形成,PZT極薄膜及びナノ構造の作製・評価に取り組み,下記の成果が得られた. 1.PbTiO_3をシード層として用いた二段階成長法によるPZT薄膜の低温形成において,シード層の膜厚,結晶性などを最適化した結果,Pt/SiO_2/Si基板上に380℃という低温で強誘電特性を示すPZT薄膜を得ることに成功した. 2.新規Ir原料(Ir(EtCp)(cod))を用いたMOCVD法によるIr電極薄膜の低温形成技術と,上記のPZT薄膜の低温形成技術を組み合わせることにより,三次元Ir/PZT/Irキャパシタを全てMOCVD法により400℃以下で形成することに成功した.Ir及びPZT薄膜とも80%以上の良好な段差被覆性を示すとともに,平面構造キャパシタとほぼ同等の電気的特性が得られた. 3.原子レベルで平坦化したSrTiO_3単結晶基板上において,作製条件の最適化により,非常に平坦なテラスと高さ数nmのステップを有するSrRuO_3下部電極を得ることができた.このSrRuO_3/SrTiO_3基板上では,再現性よく強誘電性を示すPZT極薄膜(膜厚15-30nm)が得られた. 4.Pt/SiO_2/Si基板上に自己集合現象を利用して390℃で作製したPbTiO_3ナノ構造では,最小で幅38nm,高さ1.7nmのPbTiO_3島が強誘電性を示すことが明らかとなった.また,自己集合島の方位やサイズを制御するために,結晶方位の異なるPt/SrTiO_3基板上にPbTiO_3ナノ構造を作製したところ,結晶方位を反映した特徴的な形状を持つPbTiO_3島が得られた. 5.圧電応答顕微鏡を用いたエピタキシャルPZT薄膜の分極反転過程の観察により,分域壁の横方向の移動速度を求めることができた.
|