研究概要 |
昨年度に引続き、強誘電体薄膜の物性を組成と界面の両観点から理解するために以下の研究を行った。 組成と強誘電性および圧電生の問題に関しては、酸化物強誘電体混晶系のモルフォトロピック相境界の理論が国際的にも一定の評価を得圧電定数の大きな物質をつくり出すための指導原理としての役割を果たすようになった。また、自由エネルギーの秩序パラメター空間における異方性と、分極反転過程の関係を解析し、モルフォトロピック相境界近傍の組成では、分極反転は分極の"回転"によって起ること等を明らかにした。 実験研究として、強誘電体理想界面と表面を研究した。とくに、BaTiO3,SrTiO3単結晶の表面の物性の解明に注力した。BaTiO3は大気以外の様々な雰囲気下で表面電気伝導を示すが、SrTiO3では電気伝導は全く見られなかった。また,SrTiO3単結晶を用いて、試料中を流れる電流(薄膜ではリーク電流)の検討を行っ多。電子注入により、百万倍程度の伝導変調をともなう金属-絶縁体転移を見出した。この現象には記憶性があり、10ケ月以上記憶が保持され多。記憶消去特性は1千万回以上劣化がなく、安定であった。さらに、このような特性はnmサイズの電極でも確認され、記憶可能な可逆的伝導変調がスケールダウンできることを実証した。 上記の実験的研究にもとづく集積強誘電体の理論研究としては、nmスケールの強誘電体表面の理解の仕方について新しい強誘電体ヘテロ構造の理論の一部を提案した。
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