研究概要 |
強誘電体薄膜のモデルとしては、Tilley-Zeksモデルが数学的に最もよく定義されているので、同モデルの徹底的な解析を行った。非対称表面の場合にも拡張できることを見出し、相転移点の外挿長依存性を求めた。特に2つの外挿長が異符号の場合、仮想的な秩序変数を導入することにより、相転移点や分極プロファイルが簡単に求められることを示した。 Tilley-ZekSモデルの特徴は外挿長の導入であるが、その物理的根拠に不明確な点がある。そのため、界面近傍にある双極子間の相互作用の結果として、自然に外挿長が得られるようなモデルを考案し、提案した。このモデルは層状構造強誘電体に適用できる。解析の結果、分極が相互に浸透していることが分かった。現在このモデルにより層状構造強誘電体における電場効果を検討している。 強誘電体の伝導現象や膜厚依存性を解明するためには、強誘電体表面の電子状態を知ることが重要であると考え、この理想モデルとして、十分制御された清浄で欠陥の少ない強誘電体と他物質界面の基本特性を解明している。今年度は、強誘電体を半導体の界面の特性を再検討し、強誘電体/絶縁体界面の電子状態の理解のため、(1)Pb(Zr, Ti)O_3/SrTiO_3:Nbの極低温でのトンネル電流の真偽と光照射効果,(2)Pb(Zr, Ti)O_3はn型であるという説の吟味((1)に付随),(3)BaTiO_3/La_2CuO_4の抵抗の温度依存性異常,(4)BaTiO_3単結晶の分域伝導,(5)BaTiO_3単結晶表面のAFM観察を行った。特に、(1)では、低温での光起電力と伝導性のパルス制御を初めて示した。(4)では、BaTiO_3単結晶の内部伝導が相転移温度に向けて急増し、また、分域状態に強くよることを見出し、この原因を様々な測定により検討している。
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