電子源アレイの高輝度化・高出力化のためにFEAの個別マイクロチップの動作解明を目指し以下の検討を行い、エネルギー分析系と分析用電子光学系の結合の検討も行った。 (a)PEEM光学系によるFEA動作の強拡大解析 PEEM(光放射顕微鏡)光学系によるFEA動作の強拡大(4万倍相当)解析を行った。これにより、シュピント型FEAの個別マイクロチップ(Moチップ)の電子放射電流安定性を検討したところ、放射電流強度の安定性は従来と同程度の安定性(10%)を得る場合においても、放射電流の指向性の変動を観測できることが分かった。この放射電流指向性の変動は全放射電流の利用に際しては問題とならないと考えられるが、将来のフォーカスドマルチビーム利用の際には検討を要する。 (b)低圧ガス雰囲気におけるFEA電子放射特性の検討 放射顕微鏡を用いたガス導入実験で、H_2とC_2H_4を導入したときにMo-tip FEAのエミッタティップを活性化させ放射均一性を向上させることが出来た。特にC_2H_4の導入がその効果を持続し、F-Nの傾きの変化から化学吸着による仕事関数低下が示唆された。 上記の解析で見出した放射電流指向性の変動を極端化するため、東北大学の研究班で試作されたSiFEAの低圧ガス雰囲気におけるFEA電子放射特性を検討したところ、顕著な指向性変動を確認することができた。基本的には、このような指向性変動はマイクロチップ先端の吸着ガスの影響と考えられ、吸着ガスの除去を行うことにより指向性変動を低減できることが分かった。また、指向性の偏向はエネルギー分析の際にエネルギー分布幅を広げる原因と考えられ、これの改善をめざすことにした。 これらの検討を通して高電流密度動作等の極限動作への指針を得ることができた。
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