研究課題/領域番号 |
12136206
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研究種目 |
特定領域研究(B)
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
須田 憲男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (80201581)
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研究分担者 |
福田 紀男 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (30301534)
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キーワード | コネクチン / タイチン / クロスブリッジ / 筋長効果 / スキンドファイバー / カルシウム放出 / リアノジン受容体 / トリプシン |
研究概要 |
不全心筋では長さ依存性張力発生(筋長効果またはフランクスターリング効果)が減弱することが知られている。本年は、筋長効果減弱の原因蛋白質を同定しその分子機構を明らかにするための第1歩として、太いフィラメントをZ線に連結し静止張力を担うコネクチン(タイチン)に注目し、正常心筋の筋長効果におけるコネクチンの役割について検討した。ラット右室乳頭筋をTriton X-100にて除膜処理したスキンド標本を低濃度のトリプシンで処理すると、コネクチンが選択的に分解され、サルコメア長(SL)2.0-2.4μmにおいて静止張力が低下した。トリプシン処理により、他の収縮蛋白系には影響がないことをSDS-PAGEにより確認した。トリプシン処理を行っても、筋の直径は変化せず、伸展に対して体積一定の関係が保持された。よって、筋の伸展に伴う格子間隔(太いフィラメントと細いフィラメントの間隔)の縮小は、トリプシン処理の影響を受けないことが示された。カルシウム活性化張力はSLがスラック長(1.9μm)ではトリプシン処理の影響を受けなかったが、SLが2.0-2.4μmでは顕著に低下し、長さ-張力関係の傾きが低下した。トリプシン処理標本において、短時間の収縮では、サルコメア構造に変化は観察されず、長さ-張力関係の低下はサルコメア構造の乱れによるものではないと考えられた。一方、高分子デキストランを加えると、浸透圧圧縮によって格子間隔が縮小し活性張力が上昇したが(SLは1.9μm)、トリプシン処理はこれに対し影響を与えず、クロスプリッジに対する直接的効果が無いことが示された。以上の結果から、筋長効果の約50%はコネクチンを介して発現していると推察される(残りの50%は伸展による格子間隔の縮小による)。コネクチンが伸展されることにより太いフィラメントに構造変化が起こり、その結果としてクロスプリッジの形成が促進されるのであろう。今後は肥大心や不全心筋におけるコネクチンの量的、質的変化について検討する予定である。一方、遺伝子修飾したCa放出チャネル(リアノジン受容体)の細胞内発現分布を調べるための基礎実験として、N末にGFPを融合させたリアノジン受容体を培養筋細胞に発現させたが、その機能に異常がないことから、N末へのGFP融合は発現マーカーとして有用であることが示された。来年度より、心筋分化における細胞内シグナル(カルシウムを含む)の役割について詳細に検討する予定。
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