心筋の分化、成長過程におけるCa^<2+>調節機構の解析:市販のP19CL6細胞を用いて、DMSO添加による心筋細胞への分化誘導をいく度も試みたが、市販の細胞株は心筋細胞へ分化しないことが判明した。そこで、平成14年秋より心筋細胞へ分化可能なP19CL6細胞株を小室班より入手し、共同でこのプロジェクトを遂行中である。特に分化誘導における容量性Ca^<2+>流入とDMSOの役割について焦点を当てて検討している。Ca^<2+>増幅効率の解析:筋小胞体(SR)のCa^<2+>放出量はSR内Ca^<2+>濃度に依存するので、Ca^<2+>増幅高率を適切に評価するためにはSR内Ca^<2+>濃度の測定が必須である。SR内Ca^<2+>濃度は細胞質と比べて一万倍も高いので、Ca^<2+>親和性の低い蛍光色素を蛍光活性を持たないアセトキシメチルエステル誘導体としてラットの単一心筋細胞内に導入することで、SR内からの蛍光だけを検出することが可能となりつつある。現在、心筋のSR内Ca^<2+>濃度測定に最適なプローブを探索中である。また、SR内Ca^<2+>濃度と細胞質Ca^<2+>濃度、さらに収縮が同時計測できる光学システムが完成したので、細胞質Ca^<2+>濃度の増加の原因を明確に判定することができるようになる。エクオリンを用いたSR内Ca^<2+>測定用プローブも他のグループと共同で開発を進めている。なお、マウスの遺伝子型を同定するためのPCRシステムも確立し、細胞表層膜とSRを架橋する蛋白の同定に必要なプライマーの合成も完了した。大学の新研究棟の動物実験施設での遺伝子改変マウスの飼育も可能となった。心筋の熱測定:ATP非存在下にアクチンフィラメントとミオシンフィラメントが強力に結合している状態の筋原線維にATPを加えると、まず5ms以内に吸熱反応が起こり、その後ATPの加水分解と構造変化で説明できる発熱反応が観察された。このことは、蛋白が高密度に存在すると反応のエネルギー機構が変わることを示唆し、心筋収縮のエネルギー機構の解明には、全筋標本を用いた熱測定が必要なことが示された。
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