研究概要 |
我々は、培養で拡張したヒト臍帯血由来の内皮前駆細胞を免疫抑制動物の虚血下肢領域に移植すると、血管を再生できることを確認してきた(Murohara et al. J Clin Invest 2000)。その際に内皮前駆細胞を虚血刺激で前処置すると、この細胞の機能が強化されることを示した(Akita, Murohara et al. Lab Invest. 2003)。さらに内皮前駆細胞は急性心筋梗塞患者において骨髄から末梢血中に動員されてくることを示した(Shintani, Murohara et al. Circulation 2001)。近年喫煙の害が注目され、2003年5月施行の健康増進法においても、受動喫煙の防止が謳われているが、我々は慢性喫煙者で末梢血中の内皮前駆細胞が健常人よりも減少しており、さらに禁煙によって増加することを確認している(論文準備中)。 骨髄細胞移植による血管新生 次に我々はウサギ下肢虚血モデルを用い、自己骨髄由来単核球を移植すると、虚血下肢の血管新生が有意に増強されることを確認した(Shintani, Murohara et al. Circulation 2001)。さらに急性虚血心でも同様な治療効果が得られることをブタにおいて示した(Kamihata et al. Circulation 2001)。移植された自己骨髄単核球は虚血組織において、少なくともそれら細胞自身が血管形成に参加するか、もしくは血管新生促進因子(VEGF, bFGF, Angiopoietinなど)を放出し、局所の血管新生を刺激するものと考えられた。またアメロイドコンストリクターを用いたブタ慢性心筋虚血モデルを作成し、自己骨髄単核球(幹細胞分画)移植により、虚血部血管新生と血流の改善が見られることも確認した(Ueno et al. ACC 2001)。同時に我々は2000年より、国内3施設で自己骨髄細胞移植による血管新生療法の臨床トライアルを重ね、このほどその途中経過が英国の医学雑誌に報告された(The TACT Study Group. Lancet 2002)。本研究は日本独自のものであり、治療に伴う合併症も無く、今後の展開が期待されている。最後に、本分担研究代表者の室原は、平成14年度中に久留米大学医学部より名古屋大学大学院医学系研究科に移籍したため、若干の研究の遅れがあったが、再度名古屋大学での細胞移植による血管再生療法・その基礎研究を開始していることを報告しておく
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