研究概要 |
本年度は、ヒトklotho遺伝子の骨軟骨異常疾患における関与について、ゲノム解析を行って検討した。ヒトklotho遺伝子座の最終exonの下流にCAリピートによるマイクロサテライト多型が高齢者における骨量の減少、若年者における変形性腰椎症の重症度に強く関与していることが明らかとなった(投稿中)。しかしながら、上記のマイクロサテライト多型は、最終exonの更に下流に位置するものであり、klotho遺伝子産物であるKL蛋白の産生や機能に直接結びつくものとは言えない。そこで我々は、このヒトklotho遺伝子座においてその遺伝子の機能に直接関連のあるcoding regionにおけるSNPsのスクリーニングを行った。本研究は、民族による遺伝的背景の差を除外するために、日本人(115例)と英国在住白人女性(288例、英国GEMINI社との共同研究)より採取した末梢白血球DNAサンプルを用いて行った。その結果、日本人においては6カ所、英国人においては8カ所のSNPsが同定され、そのうちの3カ所は共通であった。この共通の3カ所のSNPsに関して、日本人閉経後女性364例、英国人女性1,187例においてそれぞれ骨密度(BMD)とのassociation studyを行った。日本人閉経後女性においては、promoter領域(-395G->A)およびexon4(1818C->T)がBMPと有意な相関を示した。一方、英国人においても同様の結果が見られ、1,187例全体では相関がなかったが、加齢とともにその相関は強くなり、65歳以上の高齢群では、1818C->TSNP(p=0.014)と-395G->ASNPにおいてもBMDとの間に有意な相関が認められた(p=0.002)。以上の結果は、ヒトklotho遺伝子が人種差を超えて加齢に伴う骨密度の変化に関与している可能性を示唆するものと言える。
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