研究概要 |
1.昨年までの研究で、ヒトklotho遺伝子プロモーター領域のSNPである-395G->Aが人種差を超えて高齢女性において骨密度と有意な相関を示すこと、このG->A変異は核内転写因子との結合能に影響を及ぼすことを報告した。しかしながら本年度の検討で、骨密度と有意な相関を示したSNPsと、変形性脊椎症の重症度および脊椎靱帯骨化症とは有意な相関を示さなかった。また、ヒトklotho遺伝子の転写活性について検討を行ったところ、このG->A置換はklothoの発現効率に大きな変化を及ぼさなかったが、この近傍でのdeletion studyの結果-410と-370の間で有意なルシフェラーゼ活性の低下が見られた。現在、klothoの転写活性調節機構の解明を目指して、プロモーターの詳細なdeletion studyやmutation studyを進めるために、様々なDNAコンストラクトを作成中である。 2.昨年までの報告で、PPARγヘテロ欠損マウスでは骨量が増加していることを報告してきたが、本年、PPARγホモ欠損マウスのES細胞を培養すると強力にvon Kossa染色で示される骨芽細胞への分化が促進され、Runx2やtype I collagenなどの骨芽細胞マーカーが強力に発現誘導されることを見いだした(J Clin Invest, in press)。 3.IGF-Iの細胞内シグナル分子であるIRS-1の骨再生における関与を検討する目的で、IRS-1ノックアウトマウスの骨折治癒過程を観察したところ、野生型同胞に比べて明らかに治癒障害が起こっていることが示された。また、この障害は軟骨細胞におけるAkt/PI3Kシグナルを介するものであることが、成長板由来の軟骨細胞の培養系で明らかになった(J Biol Chem, in press)。老化に伴ってIGF-I/IRS-I/Aktシグナルが減少することによって骨形成能が抑制され、骨量減少が起こるものと推察された。
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