転写因子cbfa1を中心とした骨格形成機構の解明

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12137204
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 小守 壽文 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (00252677)
• キーワード: 骨芽細胞 / 骨 / 軟骨 / 軟骨細胞 / Cbfa1 / トランスジェニックマウス / ノックアウトマウス / 血管進入

研究概要

1.目的・方法
未熟骨芽細胞より骨細胞まで発現を誘導できるI型コラーゲンプロモーターを用いてCbfa1トランスジェニックマウスを作製、骨芽細胞系列への分化決定後の骨芽細胞成熟過程におけるCbfa1の機能を検討した。また、レチノイン酸による骨芽細胞分化およびMMP13の誘導にCbfa1が関与するかを、細胞培養あるいは中足骨の器官培養により検討した。さらに、軟骨への血管進入におけるCbfa1および骨髄の造血系細胞の関与を、Cbfa1ノックアウトマウスの軟骨を正常マウスの脾臓に移植することにより検討した。
2.結果
1)Cbfa1トランスジェニックマウスは多発性の骨折が見られ、皮質骨は薄く破骨細胞を伴った陥凹が多く見られた。骨芽細胞はトランスジェニックマウスで2倍以上に増加していたが、骨芽細胞分化は後期で阻害され比較的未熟な骨芽細胞で占められており、骨細胞は著減していた。すなわち、トランスジェニックマウスでは比較的幼若な骨芽細胞により未熟な骨が形成され、これが破骨細胞による骨融解を誘導し骨減少をきたした。
2)レチノイン酸により、骨膜細胞の骨芽細胞への分化、骨芽細胞の軟骨への進入およびMMP13の発現誘導が見られたが、Cbfa1ノックアウトマウスでは全く見られなかった。
3)Cbfa1ノックアウトマウスの軟骨を脾臓に移植すると、軟骨細胞の成熟と軟骨への血管進入を見たが、その過程は正常軟骨と比較し非常に遅延していた。
3.結論
1)Cbfa1は骨芽細胞分化を初期で促進し、後期では抑制的に働くことが明らかとなった。
2)レチノイン酸による骨芽細胞分化およびMMP13の誘導にCbfa1が関与することが示唆された。
3)軟骨への血管進入には、骨髄の造血系細胞からの因子と肥大軟骨細胞におけるCbfa1の発現がともに重要であることが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] M.Himeno: "Impaired vascular invasion of Cbfa1-deficient cartilage engrafted in spleen"J.Bone Miner.Res.. (in press).
• [文献書誌] M.J.G.Jimenez: "A regulatory cascade involving retinoic acid, Cbfa1, and matrix metalloproteinases is coupled to the development of a process of perichondrial invasion and osteogenic differentiation during bone formation"J.Cell Biol.. 155. 1333-1344 (2001)
• [文献書誌] S.Toyosawa: "Dentin matrix protein is predominantly expressed in chicken and rat osteocytes, but not in osteoblasts"J.Bone Miner.Res.. 16. 2017-2026 (2001)
• [文献書誌] W.Liu: "Overexpression of Cbfa1 in osteoblasts inhibits osteoblast maturation and causes osteopenia with multiple fractures"J.Cell Biol.. 155. 157-166 (2001)
• [文献書誌] M.Enomoto-Iwamoto: "Participation of Cbfa1 in regulation of chondrocyte maturation"Osteoarthritis Cartilage. 9. S76-S84 (2001)
• [文献書誌] C.Ueta: "Skeletal malformations caused by overexpression of Cbfa1 or its dominant negative form in chondrocytes"J.Cell Biol.. 153. 87-100 (2001)
• [文献書誌] T.Komori: "Cbfa1, a key transcription factor for skeletogenesis"In Recent Research Development in Molecular & Cellular Biology, S. G. Pandalai ed. (Research Signpost). 13 (2001)