研究概要 |
1.Chk遺伝子のクローニングと組織での発現 ヒト破骨細胞cDNAライブラリーからCskと約50%の相同性を有するChk遺伝子をクローニングした。ウエスタンプロティングにより,Cskは組織広汎性に発現しているのに対し,Chkの発現は脳,脾臓および破骨細胞に限局していることが判明した。 2.破骨細胞におけるChkの局在とアクチンリング形成 免疫組織学的検索により正常マウスの破骨細胞においては,Chkはc-Srcの発現に一致して,破骨細胞膜上の波状縁に局在性に発現されていることが明らかとなった。しかしc-Src欠損マウスの破骨細胞では,Chkは細胞質に散在し,破骨細胞の波状縁形成の指標であるアクチンリングの形成が著しく阻害されていた。 3.Chkによるc-Src抑制作用 ChkはCskと同様にc-Srcのチロシン残基527を特異的にリン酸化し,c-SrcTKを不活化した。CskノックアウトマウスからCskおよびChkを欠失し,c-SrcTKが恒常的に活性化されている細胞株を樹立した。この細胞にChk遺伝子を導入したところ,c-Srcの活性化が著明に阻害されると同時に,アクチンフィラメントの凝集,およびc-SrcTKの特異的基質であり,かつアクチンフィラメント凝集に関わる細胞質内分子であるcortactinの活性化が抑制された。 4.破骨細胞のアクチンリング形成に対するChkの効果 破骨細胞におけるChkの生物学的役割を検討するために,Chk遺伝子を組み込んだアデノウイルスを作成し,マウス破骨細胞に導入した。コントロール遺伝子を含むウイルスを導入された破骨細胞は正常のアクチンリングを形成したが,Chk遺伝子を含むウイルスを導入された破骨細胞ではアクチンリングの形成が強く阻害された。
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