研究課題/領域番号 |
12137206
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田中 弘之 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (80231413)
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研究分担者 |
山中 良孝 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (60346442)
二宮 伸介 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (10325110)
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キーワード | FGFR3 / 軟骨無形成症 / トランスジェニックマウス / PTH / PLCγ / stat1 / KDEL |
研究概要 |
代表的な骨系統疾患である軟骨無形成症の病態を中心に、軟骨の骨化制御にかかわる諸因子を明らかにし、分子病態に基づく新たな治療法を開発することを目的に研究を行ってきた。前年度までの研究から構成的に活性化されたFGFR3はPTHrp遺伝子発現を抑制すること、PTH/PTHrPの導入によってin vitroでは細胞レベルで治癒せしめることが可能であることを示してきた。昨年度より軟骨無形成症のモデル動物である変異FGFR3のトランスジェニックマウスを用い骨器官培養、およびin vivoでのPTHの作用について検討した。胎仔骨を用いた骨器官培養ではPTHの添加により、増殖軟骨層の増加の結果骨伸長は著明に改善することを示した。さらに、in vivoにおいてもPTHの投与は骨の身長を促進すること、脊椎骨の変形によるか半身麻痺をPTHは防止することなどが明らかになり、軟骨無形成症の新たな治療薬としてPTHは有望であることが示された。 一方、変異FGFR3が成長軟骨の分化増殖の異常をきたす分子メカニズムには不明な点が多いため、変異FGFR3の細胞内局在、リガンド依存性について各種変異体で検討を加えた。その結果細胞外ドメインに変異を有するTDI型FGFR3や膜貫通領域の変異であるACH型変異では細胞膜に局在すること、受容体の自己リン酸化はリガンド依存性を示すのに対し、細胞内TKドメインの変異であるTDII、HCH、SADDAN型変異ではFGFR3は細胞膜へ局在することはなく、受容体の自己リン酸化もリガンド依存性は示さなかった。この変異体が小胞体に局在するメカニズムを明らかにするため、KDEL受容体との結合を検討したところ、これら変異体では介在分子の結合を介してKDEL受容体と結合することが判明し、これが小胞体局在のメカニズムとなっている可能性が考えられた。 さらに、FGFR3の細胞内情報伝達系の一つであるPLCγと変異FGFR3の結合を検討したところ、PLCγは従来報告のあるアミノ酸残基に結合すること、この結合したPLCγは次にPKCを活性化し、stat1のリン酸化を惹起し、stat1の核内移行、細胞増殖の低下、apoptosisの促進に働いていることが明らかとなった。 つまり、変異の部位によって、細胞内情報伝達は著しく異なり、治療開発においてはその点を考慮する必要があると考えられた。 FGFRの細胞内情報伝達経路複雑であり、受容体に結合しシグナルを振り分ける蛋白が存在するはずで、プロテオミクスの手法を用いた網羅的解析に着手し、興味ある蛋白の結合を同定している。
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