研究概要 |
今年度は次の3点について研究を行い、以下の結果を得た。 1.骨芽細胞の分化調節機構の解析 1)骨芽細胞の分化を調節する転写因子の解析 山口らがすでに樹立したCbfa1欠損細胞株にアデノウイルを用いてBMP-2遺伝子過剰発現させると骨芽細胞の分化が誘導されることを明らかにした。現在,早期に変動する遺伝子群をcDNAチップを用いて解析中である。 2)間葉系幹細胞の性状の解析と同定 ヒト過誤腫から骨芽細胞,軟骨細胞,脂肪細胞,筋肉への分化能を保持する細胞を分離しSV40 T antigenの導入により,不死化細胞株を樹立した。この細胞株を用いてヒト間葉系幹細胞の性状を解析中である。 II.骨再生の分子メカニズムの解析 マウス正常大腿骨骨幹部に直径2.2mmの円形骨欠損を作製し,その修復過程を解析した結果,3-4日目に間葉系幹細胞が出現すると考えられた,そのため,現在,骨欠前と骨欠損作製5日目の間で発現量が変動している遺伝子をcDNAチップで解析中である。 III.骨再生療法の開発 マウス頭頂骨に円形骨欠損を作製し,同部に担体と細胞の複合体を移植し,骨再生に及す効果を解析した。その結果,アデノウイルを用いてBMP-2を過剰発現させた皮膚線維芽細胞を移植すると骨再生が促進されることが明らかとなった。 IV.カエル骨格形成の解析 カエル,ニホントカゲ,マウスなどの長管骨の形成過程を組織学的に解析した。その結果,カエルにおける骨代謝回転はマウスに比べると非常に遅く,カエルにおいては,マウスのように骨組織がカルシウムの貯蔵庫としての機能を有しておらず,爬虫類になってから骨組織がカルシウムの貯蔵庫として機能することが示唆された。
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