研究課題/領域番号 |
12137210
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研究種目 |
特定領域研究(B)
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
中村 利孝 産業医科大学, 医学部, 教授 (50082235)
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研究分担者 |
成澤 研一郎 産業医科大学, 医学部, 助手 (20269062)
酒井 昭典 産業医科大学, 医学部, 講師 (90248576)
鶴上 浩 産業医科大学, 医学部, 講師 (70299618)
内田 宗志 産業医科大学, 医学部, 助手 (60330990)
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キーワード | 骨髄損傷 / 血管新生 / VEGF / Flk-1 / Flt-1 / 血管芽細胞 / HIFファミリー / 骨芽細胞 |
研究概要 |
[材料と方法] ウィスター系ラットの大腿骨に達する約2.5mmの穿孔を施し、1、3、5、7、11、14および21日目に損傷部組織を摘出し、電顕を含め細胞・分子生物学的に検討した。前骨芽細胞はALPで、骨芽細胞はALPとosteocalcin mRNAで、血管芽細胞はFlk-1免疫反応で確認した。さらにFlt-1とHIFを免疫染色で、VEGFmRNAの局在をin situ hybridizationにより検索した。 [結果]損傷後1日目は血腫と炎症細胞が出現し、3日には肉芽組織で置換され、ALP陽性を呈する細胞群が多数出現した。そのなかに、Flk-1陽性を呈する血管芽細胞が散在性に存在した。5日以降、損傷部には新生骨が見られ、新生骨間には血管新生が認められた。7日から11日にかけて新生骨間に毛細血管が発達するとともに髄腔内新生骨と骨髄外の骨膜性新生骨とが連結し、14日から21日にかけて骨髄細胞が再生した。 RT-PCRでは、HIF1αmRNAは1日から7日まで発現し、11日以降消失した。VEGFmRNAは3日にはVEGF120およびVEGF165が、5日にはVEGF188が発現し11日まで持続し、14日以降消失した。3日の前骨芽細胞および血管芽細胞にはVEGFmRNAシグナルが認められた。Flk-1は血管芽細胞にのみ、Flt-1はどちらの細胞にも認められた。またHIF1αおよび1βの免疫反応は血管細胞に認められた。5日では、骨芽細胞、血管芽細胞ともVEGFmRNAシグナルが持続し、骨芽細胞にはFlt-1が、血管芽細胞にはFlk-1が認められた。11日、VEGFmRNAシグナルは消失した。HIF1α、βは血管芽細胞に認められたが、骨芽細胞には認めなかった。 [結論](1)骨・骨髄再生時に損傷部に出現する細胞群は、ALPとFlt-1が発現しており、Flk-1が発現した細胞は血管細胞へ、Flk-1(-)Flt-1(+)の細胞は骨芽細胞へと分化する。(2)これらの細胞はすべてVEGFを産生し、autocrine,paracrineの様式で、Flk-1を発現した血管芽細胞の分化を促進する。骨芽細胞系細胞はFlt-1の発現を経て、骨芽細胞に分化する。(3)これらの細胞におけるVEGF発現に先立って、血管系細胞ではHIF1ファミリーが発現する。今後、骨芽細胞分化へのFlt-1/VEGFシステムの役割につきノックアウトマウスを用いて検討する。
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