骨形成因子(BMP)のシグナル伝達のメカニズムについて検討し、以下の知見を得た。 まず、ユビキチン・プロテアソーム系による、BMPとTGF-bのシグナル伝達制御について解析した。HECT型E3ライゲースSmurf1は、BMP特異型Smad1/5に結合し、その分解を促進することでBMPの制御している。ところが我々の検討では、Smurf1はSmad1/5のみならず抑制型SmadであるSmad6やSmad7とも強く結合した。そして核内に局在するSmad6/7はSmurf1存在下に核外に移行した。さらにSmurf1はSmad7を介してI型TGF-bレセプターに結合し、Smad7とレセプターのユビキチン化とプロテアソームにおける分解を促進した。以上のことから、BMPとTGF-bのシグナルが同じE3ライゲースによって制御されているというユニークなメカニズムが明らかになった。 次に、抑制型SmadであるSmad6とSmad7のdeletion mutantとキメラ蛋白を作製し、両者の機能的差異に対するドメインの役割を検討した。その結果、Smad7がSmad6と異なりBMPのみならずTGF-bのシグナルも強力に抑制することは、Smad7のN末端側によって規定されていることを明らかにした。 さらに、東京大学医科学研究所の山本雅先生との共同研究で、BMPシグナルの新しい制御因子としてTobを解析した。その結果、TobはSmad1のMH2領域に結合し、その細胞内局在を変化させ、転写を阻害した。tob遺伝子欠損マウスの骨量は増加することから、TobはSmadに結合し、BMPのシグナルを負に制御していると考えられる。
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