骨形成因子(BMP)のシグナル伝達のメカニズムについて、ユビキチン・プロテアソーム系によるレセプターと細胞内シグナル伝達分子Smadの分解に焦点を絞って検討した。 まず、昨年までに明らかにした、Smurf1がSmad7を介してTGF-bのI型レセプターに結合し、Smad7とレセプターのユビキチン化とプロテアソームにおける分解を促進する系について、そのメカニズムを詳細に検討した。すると、Smurf1のN末端に存在するC2ドメインが、Smurf1-Smad7複合体を、レセプターの存在する細胞膜に局在させるのに重要な働きをしていることがわかった。Smurf1がレセプターに結合するためにはSmad7が必要だが、Smurf1が細胞膜へのSmad7の局在を促進することから、Smurf1とSmad7は互いに協調的に作用して、TGF-bのシグナルを抑制していることがわかった。 次に、Smurf1-Smad7複合体のBMPのI型レセプターに対する機能を調べてみた。するとSmurf1-Smad7複合体はTGF-bのレセプターの場合と同様に、BMPのI型レセプターにも結合し、その分解を促進することがわかった。さらに、Smurf1-Smad7複合体は、BMP特異型Smadである、Smad1とSmad5にも結合し、そのユビキチン化依存的分解を促進した。これらは、Smurf1は多段階にわたりBMPのシグナルを制御していることを示唆する。 今回の研究から、TGF-b/BMPシグナルにおいて、ユビキチン・プロテアソーム系は、細胞内のSmadの量を調節してリガンドに対する応答性を制御したり、活性型Smadや活性型レセプターを分解することで、シグナルの強さに依存した転写量を厳密に調節していると考えられた。
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