セリンアセチル転移酵素(SATase)は、システイン生合成の重要な中間体である0-アセチルセリン(OAS)を生成する酵素である。OASは硫黄同化系酵素遺伝子の発現誘導物質としての役割も果たしている。そこで硫黄同化能の高効率化とOASの硫黄同化系の調節物質としての役割を解明するため、SATase遺伝子を導入した形質転換植物の作製と解析を行った。細胞質局在性であるスイカSATaseはシステインによりフィードバック阻害を受けるが、阻害を受けない点変異SATase遺伝子(SATG277C)が既に作製されている。これらの遺伝子をシロイヌナズナに導入し、得られたトランスジェニックシロイヌナズナのOAS、システイン、グルタチオン含量を測定した結果、野生型シロイヌナズナと比較して顕著に増加していた。細胞質中のOAS含量が増加している形質転換植物では、硫黄同化系酵素遺伝子の発現が増加している可能性が考えらるため、硫黄同化系酵素遺伝子の発現量の変化について現在検討中である。 また、高等植物には土壌中の無機硫黄を有機性含硫黄化合物であるシステインに固定する系が存在する。システインはさらにメチオニンや含硫黄二次代謝産物など生物活性を有する物質の合成に利用される。ネギ属植物に存在するアリナーゼは含硫黄二次代謝産物であるS置換システインスルフォキサイドの炭素・硫黄結合開裂を触媒し、生じる揮発性物質は植物種特異的臭気の原因物質である。本研究ではニラよりアリナーゼタンパク質の抽出・精製を行い解析を行った。さらにニラアリナーゼcDNAクローンを単離し解析を行い、大腸菌、酵母を用いて機能的発現系を構築し、組み換えアリナーゼcDNAを用い酵素活性中心であるピリドキサールリン酸結合リジン残基の同定を行った。またアリナーゼの免疫組織学的染色を行いアリナーゼタンパク質の組織局在部位が維管束鞘であることを示した。
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