研究概要 |
高等植物の種子には数種類の貯蔵タンパク質が液胞の一種であるプロテインボディに蓄えられており,発芽後の窒素源として用いられる.これらのタンパク質は種子の登熟期に小胞体で前駆体として合成され,小胞輸送により液胞に運ばれ,液胞プロセシング酵素(VPE)によるプロセシングを受けて成熟型になる.平成14年度は,種子の貯蔵タンパク質の細胞内輸送・集積システムに関わる因子の同定を目指して,貯蔵タンパク質の前駆体を蓄積するシロイヌナズナ変異体の単離とその解析を行った.得られた成果は下記の通りである.シロイヌナズナの主要な貯蔵タンパク質である12Sグロブリンと2Sアルブミンの抗体を作製し,これらを用いたウエスタンブロット法により,約28,000のT-DNAタグラインより14の変異体ラインを見出した.蓄積している2Sアルブミン前駆体の分子量から,得られた14の変異体ラインは2つのタイプ(AタイプとBタイプ)に分けることができた.Bタイプの変異体(6ライン)はいずれも種子型液胞プロセシング酵素であるβVPEを欠損しており,その遺伝子内に変異が見つかった.Bタイプの変異体では貯蔵タンパク質の液胞への輸送は正常だが,液胞内でのプロセシングに異常があることが判明した.一方,Aタイプに属する変異体にはβVPEが存在することから,液胞までの輸送過程に異常があると考えられた.得られた変異体については,次年度(最終年度)表現型を詳しく解析するとともに,原因遺伝子の同定を行う予定である.
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