研究概要 |
イネ種子貯蔵タンパク質の細胞内輸送・蓄積経路の遺伝的制御機構の解明を目的に、130系統のグルテリン前駆体集積変異(57H変異)を作出し、新たに4変異遺伝子座を同定したこれら変異体をタンパク質組成、組織化学的、遺伝学的に解析し、各々の遺伝子機能について考察した。 ・翻訳産物の小胞体(ER)内での選別(タイプ1変異) PDI欠損変異であるesp2の解析から、PDIがER内におけるグルテリン前駆体と,プロラミンの分別に必須であることが示された。glup4、glup6もこのタイプに属することから、両タンパク質のER内分別には少なくとも3つの遺伝子が関係することが示された。 ・ERから蓄積器官への輸送(タイプ2変異) このタイプの変異は、両タシパク質がER由来PB中でそれぞれ別個の顆粒を形成し蓄積することから、ER内タンパク質分別後の過程が阻害されていると考えられる。このタイプにはGlup1、glup2、Glup5、glup7、Glup8が含まれ、当該経路には少なくとも5つの遺伝子が関与すると考えられる。 ・液胞内分解(タイプ3変異) glup3の解析により、グルテリン前駆体の成熟にはVPEが必須であることが示された。また、glup3においても成熟型グルテリンが集積するととから、イネでは少なくとも2つのVPEが存在することが示された。 これらの解析結果から、グルテリンの輸送集積経路を4段階に分け、各段階を制御する遺伝子が、(1)cis-ER、のグルテリンm-RNAの局在、(2)ER内におけるタンパク質の分別(Esp2(PDI)、Glup4、Glup6)、(3)ERから貯蔵型液胞への輸送(glup1、glup2、glup5、Glup7、glup8)、(4)貯蔵型液胞内での成熟化(glup3(VPE))であることを明らかにした。
|