植物における貯蔵タンパク質の遺伝子発現、生合成、輸送集積の機構を理解するためイネ胚乳細胞中での貯蔵タンパク質の集積をモデルとして研究を開始した。本年度は特にイネにおいて種子貯蔵タンパク質が集積するための1)胚乳細胞の分化機構2)プロテインボディI(PB-I)、プロテインボディII(PB-II)形成初期の形態像3)プロラミン前駆体のシグナルペプチドが貯蔵部位の膜認識に対して果たす役割を明らかにする方向で研究を開始した。 1)の研究結果として、開花後3日目(3DAF)のイネ種子1粒の胚乳組織(アリューロン層、デンプン性内胚乳へはまだ分化していない)からcDNAライブラリーを構築した。このcDNAライブラリーにより胚乳細胞分化に関わる遺伝子を同定する事が可能となった。 2)PB-I、PB-II形成の初期像と考えられる形態を透過電子顕微鏡によりとらえることに成功した。PB-Iは網状に変形した網目の交点と思われる部分で特に高頻度で集積を開始することが判った。一方、グルテリンは、これまで考えられていたシスターナルER(c-ER)ではなくER-ゴルジ体中間体(ERGIC)と言われる構造体上で集積を開始する事が判明した。 3)プロラミンシグナルペプチドがPB-ERへのターゲティングに対して果たす機能として、シグナルペプチド内のリジン残基が本質的に重要であることを示す結果を得た。
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