研究概要 |
高井らはFc受容体およびそれらのサブユニット分子の遺伝子を欠損したマウスを用いてマスト細胞の機能ならびに生体レベルでのアレルギーなどの免疫疾患とFcRとの関係の解析を推進している.最近,マスト細胞上に発現するPaired Immunoglobulin-like Receptor(PIR)-B遺伝子欠損マウス,gp49B遺伝子欠損マウス,さらにこれらの膜アダブター分子であるDAP12遺伝子欠損マウスを開発し,マスト細胞の機能面での解析を中心に進めており,次々と興味深いことが明らかになりつつある.これまでの主な研究成果として以下の項目が挙げられる. ・マスト細胞欠損マウスではIgEとFcεRlにより誘発されるアナフィラキシーによる体温低下が観察されなくなり,さらにヒスタミン欠如マウスでは同様にこの応答が観察されないことから,ショックによる体温低下にはマスト細胞由来のヒスタミンが主な原因になっていること. ・PIR-B欠損マウスではB細胞とマスト細胞の機能亢進が観察され,さらにアレルギーの誘発に関係するTh2型の応答が亢進することを発見した. ・マスト細胞上のFcεRIはIgE刺激により発現が亢進するが,このメカニズムにFcγRIIBの抑制回路の機能は関与していないこと. ・マスト細胞のFcRの活性化によってI型アレルギーとIII型アレルギーが誘発される際,マスト細胞のシグナル伝達を最上流部でコントロールするチロシンキナーゼであるLynはI型アレルギーには必須である一方,III型アレルギーへの関与は低いこと. ・gp49Aはマスト細胞上で新規な活性化型レセプターとして機能し,アレルギーなどを亢進する可能性を指摘した.
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