研究概要 |
Immunoglobulin (Ig) -like receptor (IgLR)という範疇に属する新規なレセプター分子群が続々と単離され,その機能が注目され始めてまだ5年ほどしか経過していないが,これらが免疫調節に重要な役割を担う証拠が次々と挙がっている.マウスのPaired IgLR (PIR)は活性化シグナルを伝達するPIR-Aと,逆に抑制性シグナルを伝達するPIR-Bのペアからなる代表的なIgLRであるが,PIR-Bが欠損するとB細胞,樹状細胞のシグナル伝達が撹乱され,その免疫応答はTh2型に著しく偏ることを示した.B細胞と樹状細胞においてPIR-Bは定常状態の細胞の段階で既にそのITIMがチロシンリン酸化されており,その後BCR刺激やGM-CSF刺激に応じて,正常なシグナル伝達を助けている.PIR-Bが欠損したこれらの細胞ではBCRを介して,あるいはGM-CSF刺激後に細胞内に導入されるシグナル伝達が増強され,あるいは一過性になり,正常な応答が起らない.これにより樹状細胞は成熟が阻害され,IL-12産生が不十分になるためにTh1型応答への経路が阻害されてTh2型応答を起すようになると考えられる.したがって正常な免疫応答に不可欠であるこのレセプター・ペアが何を認識し,どのようなシグナルを細胞内に導入しているのか,さらに免疫疾患にどのように関連しているのかを明らかにすることがアレルギーや自己免疫などの発症を理解するうえでたいへんに重要になってきた.
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