研究概要 |
本研究期間に以下の成果を得た。(1)中性セラミダーゼは,ほ乳動物細胞では形質膜貫通II型トポロジーを示すが,一部はN-末端部位がプロセッシングを受けて細胞外に分泌されることを示した(J. Biol. Chem.276,26249-26259,2001)。(2)本酵素の遺伝子構造およびプロモーター領域を解明した。また,肝臓・腎臓型および脳型セラミダーゼは異なる発現制御を受けていることを明らかにした(BBRC 292,160-166,2002)。(3)脊椎動物の中性セラミダーゼはN末端シグナル配列の直後にムチンボックスが存在し,実際に高度に0-型糖鎖で修飾されていることを見いだした。一方,ムチンボックスは細菌および無脊椎動物の分泌型中性セラミダーゼには存在しない(J. Biol. Chem. under revise)。(4)様々な変異体セラミダーゼを用いた解析からムチンボックスはほ乳動物中性セラミダーゼを形質膜II型膜蛋白質として発現するために必須なドメインであることを示した(J. Biol. Chem. under revise)。(5)ラットのシグナル配列とこのムチンボックスを付加することでGFPやその他の可溶性蛋白質を形質膜II型膜貫通蛋白質として発現させる方法を開発した(特許出願中 特願2002-173469)。(6)ゼブラフイッシュ初期胚における遺伝子ノックダウン系を導入し,本酵素遺伝子のノックダウンが正常な胚発生を著しく損なうことを見いだした(平成15年度日本生化学会において報告)。(7)一方,細胞性粘菌の本酵素遺伝子のノックアウト株は形態形成に顕著な異常は観察されなかった。このことから,脊椎動物への進化の過程で獲得されたムチンボックスは,本酵素の細胞内局在および個体における生理機能に大きな影響を持つことが推測された。(8)サイコシンやリゾスフィンゴミエリンを生成するセラミダーゼと異なる新規リゾスフィンゴ脂質生成酵素のクローニングに成功した(J. Biol. Chem.277,17300-17307,2002)。
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