研究課題/領域番号 |
12141101
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研究種目 |
特定領域研究(B)
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研究機関 | (財)東京都医学研究機構 |
研究代表者 |
正井 久雄 財団法人 東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (40229349)
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研究分担者 |
大坪 素秋 久留米大学, 分子生命科学研究所, 助手 (10211799)
佐藤 憲子 東京大学, 医科学研究所, 助手 (70280956)
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キーワード | 細胞周期 / Cdc7-ASKキナーゼ / MCM2 / サイクリン依存性キナーゼ / マウス胚性幹細胞 / リン酸化 / DNA複製開始 / DNA複製開始 |
研究概要 |
動物細胞の染色体複製開始の活性化には、CDKとCdc7の2種類のキナーゼによるリン酸化反応が必要であることが明かとなってきた。この2種類のキナーゼ活性はいずれもG1期シグナルにより制御される。そこで、本年度は、この2種類のキナーゼはどのように協力しあって、複製開始をtriggerするのか、また、Cdc7キナーゼ活性を決定する、ASK活性制御サブユニットの発現がG1シグナルによりどのように制御されるかについて、検討した。得られた結果は以下のとおりである。 1 Cdc7キナーゼはMCM複合体のMCM2タンパク質を特異的にリン酸化する。MCM2はin vitroにおいてCdkによってもN端の特異的な部位をリン酸化され、このリン酸化により、MCM2のCdc7によるリン酸化が著しく促進される。Cdc7はCdkによりリン酸化されたMCM複合体内のMCM2上の、特異的なセリン残基をリン酸化する。このリン酸化は、細胞内でS期特異的に起こるため、CdkとCdc7の共同作用によるMCM2のリン酸化が、複製開始に重要であることが示唆された。 2 Cdc7遺伝子ノックアウトマウスは胎生3.5から6.5日の間に死亡する。また、Cdc7遺伝子欠損ES細胞は致死である。ES細胞においてCdc7を講導的に欠失させると、直ちに細胞増埴とDNA合成が停止し、細胞はその後細胞死を起こした。これは、Cdc7欠損によるS期停止の結果、異常な複製構造が蓄積し、それがチェックポイント反応を誘導したと考えられる。このとき、p53蛋白質の蓄積も観察された。 3 p27とmuCdc7のdouble knockoutは胎生8.5日まで生存し、blastocystsのin vitro培養においてもDNA複製が部分的に回復していることがしめされた。したがって、Cdk活性を上昇させることによりmuCdc7欠損による増殖阻害の一部が少なくとも初期発生においては回復することが明かとなっな。しかしながら、胎生9.5日以降は生存している胎児は観察されず、発生が進むとCdc7の要求性はより厳格になることが示された。 4 ヒトASKの転写は、増殖刺激に応答して活性化される。この活性化は、転写開始部位近傍の63bp内に含まれる、Splサイトと、未知の配列により制御されることを明かにした。Splサイトを変異するとserumやE2Fに対する応答性を失うが、後者の配列の変異は血清非依存性の転写を活性化した。したがって後者の配列は、むしろASKの転写を抑制する因子が結合することが示唆された。
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